陸拾参 ページ24
･
切国「あんた、大丈夫か」
『はは、兄さん。庇ってくれたんは嬉しいけどな？
この都でうちみたいな妖魔、
庇ったらあかんよ。
兄さんまで何や言われてまうから』
切国「俺はいい。慣れている。
それより悪かった………まさか、
あそこまで酷かったとは思わなかった」
『へーきへーき。ありがとうな』
切国「…………何で、あんたは」
『んー？』
切国「笑っていられるんだ」
都を歩きながら、兄さんは言った。
少し躊躇うようなそんな声音やった。
『ふふ、大した事、ないからや。
あんな名前も顔も知らへん奴より、
兄さんに何や言われた方が、よほど辛いで？
でも兄さん優しいから、
そないな事言わへんの知っとるから。
今やって庇ってくれた。
嬉しく思うとるよ？』
切国「！」
『それだけ。さて、なら頑張って続けよか。
一緒に来てくれるんやろ？』
切国「………嗚呼」
Aside〜end〜
───────────────
山姥切side
本歌と写しは違う。
比較され、そして“嗚呼、コレは駄目なんだ”と
時の権力者達は本歌と俺を見比べては
そう言って離れた。
それが多々あって、今でもそれが酷く恐ろしい。
しかし、Aは違った。
妖魔だからと言う理由で、あいつは殴られかけた。
とっさに庇ったが、Aは笑って
“気にするな”と答えた。
Aの口からその言葉が出た事に、
俺は理解出来なった。
どうして笑ってられるのかと、
俺は彼女に問いかけてみた。
『ふふ、大した事、ないからや。
あんな名前も顔も知らへん奴より、
兄さんに何や言われた方が、よほど辛いで？
でも兄さん優しいから、
そないな事言わへんの知っとるから。
今やって庇ってくれた。
嬉しく思うとるよ？』
…………………俺は、真正面から見られるのが苦手だ。
見透かされそうで、自分でも知らない物を
見られているようで。
でも、布の間から見えたのは、
暗闇を照らす灯火だった。
『それだけ。さて、なら頑張って続けよか。
一緒に来てくれるんやろ？』
切国「………嗚呼」
正面から見られるのは嫌だ。
だが、隣にいる彼女の瞳は………
嫌じゃない。
山姥切side〜end〜
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作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2020年7月6日 12時
