【薄桜鬼】追いかけ隊士！！玖章

+参佰参拾伍+ ページ15

雪ちゃんが出ていった戸を
眺めながら俺は思う。

…………なーんで壬生狼と呼ばれてる
この局に、たった一人いるんだろうな。


肝が据わった奴とは思ってはいたが。


再び静かになった部屋が、妙に寂しく感じて
これから本当に何もかもが無くなると、
分かったら……………急に怖くなった。





俺は自分で言うのもあれだが、俺は正直だ。
だから、余計に怖くなっちまった。

この数日見た雪ちゃんの素顔。
怖い奴だ。ちっとも俺を楽にはしてくれない。

ちっとも………死なせてくれやしない。









新田「(あんな風に………俺が生きている事に喜ばれたら……
生きてぇと、思っちまうじゃねぇか)」









死は無に帰る。
今まで築き上げたもの、全てが消える。

それが、何よりも怖い。
雪ちゃんのあの顔も、見れなくなるんだろうか？

家族の………喧嘩別れした、姉貴の顔も見れないまま。
このまま………







新田「(姉貴………姉貴……………
あんたに会いてぇ。あんたに会いたくて仕方ねぇ)」









しょうもねぇ喧嘩をして、家を出て、
京に流れてきたが……………
もう二度と会うことはねぇって思ってたが。


懐かしくて、会いたくて、愛しくて。

謝れば良かった。こんな思いをするくらいなら。
姉貴はいつも俺を思ってくれていたと言うのに。



世間様は俺が思ってる以上に非情だった。

けど、いつだって支えてくれたのは姉貴だった。
雪ちゃんがあまりにも姉貴に似ていたものだから、
つい甘えたくなっちまった。



嗚呼、苦しいな。
剣の腕を磨いて、姉貴に見せてやりたかった。
姉貴を越えて見せたかった。

ただ、それだけだったのによ。









新田side〜end〜

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