+参佰参拾肆+ ページ14
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新田「なあ、雪ちゃんよ…………
山野は………元気か……………?」
千鶴《………え?山野さん、ですか?》
新田「嗚呼………最近、しんみりした面見せるんだ………
あいつ、隠し事は得意みてぇだが、
昨日も………思い詰めた顔をして、やがったんだ」
新田さんはそう言って、中庭の方を向いた。
中庭には黄色の蝶がヒラヒラと舞っている。
遠くから眺めるように……………
蝶を見ているのに蝶のもっと先を見据えるように
彼は落ち着いた声で話す。
新田「……………全く……非力なもん、だな」
千鶴《新田、さん?》
新田「何でも、ねぇ……………
それより雪ちゃん、水をくれねぇ、か?」
千鶴《水ですね、分かりました。取りに行ってきますね》
新田「…………嗚呼、それと………雪ちゃん」
千鶴《?はい?》
新田「………ぁ、」
そのとき、新田さんは何かを言いかけたけれど、
その言葉は出ることなく…………
新田「…………いや、ついでに、酒の方が飲みてぇ、なぁ」
千鶴《駄目です》
新田「だよ、なぁ……………」
弱々しく、笑うだけで。
その言葉を、聞くことが出来なかった。
・
新田「………なあ、安、ちゃん……」
安藤「…………」
新田「俺、ガタが来たみてぇ、だ」
安藤「……………」
新田「言えねぇ、よ……………
あんな風に…………笑いかけられたら、さ」
千鶴side〜end〜
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新田side
自分の体は、自分が思ってたよりも
単純に出来ていたらしい。
俺の体は、俺が一番分かっていた。
指が思うように動かない。体がだるい、傷が痛ぇ。
いつもなら起きて最初に思うのがこれだ。
だが、今日は違った。
体がいつもよりも軽く感じた。それと同時に分かる。
俺には、時間がもう残されてない。
死が、そこまで来ていた。
よく分からないが、それがはっきり分かった。
正直、やっと楽になれるのかと
内心肩の荷が降りたような気がした。
痛みも、悔やみも、苦しみも。
何もかもが無くなる。
それが死。
何もなくなる。
けど、そう思っちまったせいで、
真逆の欲が出てしまった。
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冷泉 雪桜(プロフ) - ひゃくまるさん» コメントありがとうございす!そうですね。いつか書けたらいいなと思います。これからもよろしくお願いしますね! (2018年12月26日 15時) (レス) id: 18535e1a43 (このIDを非表示/違反報告)
ひゃくまる(プロフ) - これから山野さんがどんな風に成長していくか楽しみです!作品を読んでて思ったことが山野さんは辛いこととか抱え込んでしまうキャラなのでいつか誰かを頼れるようになるといいですね(*´-`) (2018年12月26日 1時) (レス) id: 057beedb8c (このIDを非表示/違反報告)
なや(プロフ) - 返信ありがとうございます!これからも楽しみにしております(´∀`*) (2018年12月2日 21時) (レス) id: 47f47e69bf (このIDを非表示/違反報告)
冷泉 雪桜(プロフ) - なやさん» なやさんとこの小説を結びつけてくれたのも新選組が紡いでくれた縁だと思います。更新が遅い日々が続いてしまいますがこれからもよろしくお願いします(*´-`) (2018年12月1日 23時) (レス) id: 18535e1a43 (このIDを非表示/違反報告)
冷泉 雪桜(プロフ) - なやさん» なやさんコメントありがとうございます!私はただ誰かと共感したくて自己満で書いただけですが、なやさんのような人に読んでもらえるなんて私としても嬉しく思います。 (2018年12月1日 23時) (レス) id: 18535e1a43 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:冷泉 雪桜 | 作成日時:2018年7月10日 16時