+参佰伍拾陸+ ページ36
原田side
原田「落ち着いたか？水持ってきたから飲んどけ」
『は、ぃ………』
原田「落とすなよ？」
数刻経ち、ある程度の火が収まった頃、
俺は竹筒を持って戻る。
隊士共はまだ他の隊と作業しているが、
休憩がてら山野の様子を見る為に抜けてきた訳だ。
少し焼け焦げた小屋の前に小さく踞る山野がいる。
俺は水が入った竹筒を渡すが、
伸ばされた手は弱々しく、落としそうにしながら
彼女は竹筒を受けとる。
その様子を見て、直ぐに持ち場に戻ろうとも思ったが、
放って置けず結局俺はそのまま彼女の隣に座り
その場に残ることになった。
原田「体は大丈夫か？」
『………ぁ、ええ………大丈夫です』
原田「腕、貸してみろ。晒しが解けてるぞ」
『これくらいは………』
原田「巻きにくいだろ？ほら」
『……………』
腕を出すように促すと、
山野は恐る恐る腕を差し出す。
相変わらず、細ぇ腕だ。
だがその腕に刻まれた傷跡は痛々しく残っている。
俺は涙を見せた山野の姿を思い出す。
アザになるほど腕を握りしめて、
体を震わせ、真っ直ぐな涙を流していた山野。
その姿を見ていたら歯痒くて仕方なかった。
逸らすことなく真っ直ぐに炎を見つめる姿が
あまりにも目に余るもので、
俺は火から目を隠す事しか出来なかった。
『…………原田さん』
原田「ん？」
『先程はお見苦しい所を見せてしまってすみません。
ありがとうございました。
もう、大丈夫ですから…………』
原田「…………お前、いつもそうやって生きてきたのか？」
『………え』
原田「いつも、そうやって弱い所を隠して、
…………生きてきたのか？」
『………………』
不意にそんな言葉が
自分でも知らねぇ内に口走っちまった。
だが、もう見てられなかった。
こいつはいつも傷ついて、弱い所を隠して、
誰にも頼ろうとはしねぇ。
誰かが気づいてやらないと、
山野は自分でも知らない内に自分で自分を殺しちまう。
これ以上は………
原田「誰だって弱い所はある。
怖い物だってある、隠したい事も。
けどな……………全部を抱える必要はねぇんだぞ？」
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冷泉 雪桜(プロフ) - ひゃくまるさん» コメントありがとうございす！そうですね。いつか書けたらいいなと思います。これからもよろしくお願いしますね！ (2018年12月26日 15時) (
レス) id: 18535e1a43 (このIDを非表示/違反報告)
ひゃくまる(プロフ) - これから山野さんがどんな風に成長していくか楽しみです！作品を読んでて思ったことが山野さんは辛いこととか抱え込んでしまうキャラなのでいつか誰かを頼れるようになるといいですね(*´-`) (2018年12月26日 1時) (レス) id: 057beedb8c (このIDを非表示/違反報告)
なや(プロフ) - 返信ありがとうございます！これからも楽しみにしております(´∀｀*) (2018年12月2日 21時) (レス) id: 47f47e69bf (このIDを非表示/違反報告)
冷泉 雪桜(プロフ) - なやさん» なやさんとこの小説を結びつけてくれたのも新選組が紡いでくれた縁だと思います。更新が遅い日々が続いてしまいますがこれからもよろしくお願いします(*´-`) (2018年12月1日 23時) (レス) id: 18535e1a43 (このIDを非表示/違反報告)
冷泉 雪桜(プロフ) - なやさん» なやさんコメントありがとうございます！私はただ誰かと共感したくて自己満で書いただけですが、なやさんのような人に読んでもらえるなんて私としても嬉しく思います。 (2018年12月1日 23時) (レス) id: 18535e1a43 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2018年7月10日 16時
