参拾肆話 ページ35
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燭台「………………いいや。
僕は、それを───望まない」
『！』
燭台「彼女はそれを望まない………
だから………隠しはしない」
御社宮神
《……………“望んでくれない”の、間違いでは？》
燭台「それは違う。願いだよ」
燭台切様は、一度深く深く息を吐いて、
私の肩を握る手を緩めると、私を引き寄せた。
私を守る体制で、彼は真っ直ぐと
目の前にいる神にそう告げる。
燭台「否定はしないさ。この子が欲しい。
どこにもいって欲しくないし、死んでほしくない。
でも、それは僕が彼女を選んだ理由とは背く。
隠してしまえば確かに彼女は僕と同じ時を
過ごす事が出来るけど………
それじゃあ駄目なんだよ。
彼女はそれを望まない。
僕はそんな彼女に焦がれたんだ」
──“人のままの、彼女がいい”──
燭台「僕が好きになったのは、人である彼女だ。
君にとやかく言われる筋合いはないよ」
………そう、か。そうだったのか。
彼の言葉にようやく私は気づいた。
彼は、人である私を選んでくれていたのだ。
燭台切様は、
それはまるで、私の存在を留めてくれたような、
妖界と現世を彷徨う自分を、
現世へと繋いでくれたような。
そんな気がした。
私は今まで、普通の人間とも、妖怪や神々とも
“異端者”として認識されていた。
そんな私を彼は“人として”選んでくれた。
御社宮神
《………直ぐに死にますよ？》
燭台「知っているさ。
彼女はきっと僕を置いて先に逝ってしまうだろう」
御社宮神
《共に居たいと思うでしょう？》
燭台「嗚呼。それでも、短命だとしても………
例え永遠には一緒に居られなくても。
少ない時間の数だけ、僕は彼女と生きていく。
人である主が好きだから。愛しているから。
それが僕が決めた道で、僕らの縁の形」
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作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2020年6月28日 10時
