参拾壱話 ページ32
･
シャラシャラと、鎖を鳴らしながら
鶴丸国永の幻影は私達の前を歩く。
時折こちらを見つつ、楽しげに歩いていた。
『(どこまで行くんだろう………)』
燭台「！主、見て」
ふと燭台切様がとある方角を指す。
そこにはヒラヒラと何かが待っていた。
蝶だ。そしてその蝶は私達に近づくと人の形になる。
………それは、かつて九重本丸の前任の
審神者見習いであった夜蝶さんの幻影だった。
彼女もまた不思議と表情が見えない。
ただ微笑んでいる。
燭台「夜蝶、君………」
『(………あの世とこの世の境目……
それがこの空間なら)』
じゃあ、目の前にいる二人は………本物？
鶴丸国永と夜蝶さんは互いに笑って
私達を導くように先を歩いて行く。
そしてしばらく歩いていた時、明るい場所に出た。
霧が晴れて行く………
私はもう一度、二人に向き直った。
すると夜蝶さんと目があったような気がして、
彼女はゆったりと歩み寄ってくると、
私の頭を優しく撫でた。
“もう、大丈夫”
『！』
“この先に行けば、帰れるわ”
それは、とても心地がいい声音だった。
暖かくて………まるで優しく包むような母の、声。
その声を聞き届けたのと同時に、
トンッと背中を押された。
振り返れば、そこには…………
優しく微笑む“父”が、居た……気がした。
瞬間、眩い光に包まれる。
本能的に神域から出るのだと悟った。
･
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 192人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2020年6月28日 10時
