弐拾玖話 ページ30
Aside
燭台「ぅ………」
『！！燭台切様……っ』
燭台「ｯ………ご、め…………少し、休ませ、て」
しばらく歩いていた時、ついに燭台切様は
力尽きるように膝をついてしまった。
私は慌てて支えて、彼を近くの木に座らせる。
顔色が悪くなってきた………
元々彼は肌が白いけど、
更に蒼白となってしまっていて、
汗を滲ませながらフゥフゥと息を荒くしている。
駄目だ………もう動かせない。
腹部の傷だけじゃなくて、
全体的に傷を負っていたんだ。
無理をさせてしまった。
彼の頬に触れれば、少し熱っぽかった。
これ以上は動かせない………何か、何かない？
辺りを見渡す。視界の悪い濃霧があって、
寒気を誘うような空間………
ここは多分、神域に近い場所なんだ。
あの世とこの世の境目の空間。
霊山と言われるだけある。
『(………水音がする)』
すると近くで水音がした。
小川………どこからか水が湧いている。
私は辛そうにする彼を一度見て、
音がする方へ行ってみる。
綺麗な水だった。湧き出ている。
『………(大丈夫そうか)』
一度飲んでみて、安全そうだったから
そのまま口に含む。
冷たい水が私の口の中を満たす。
それから戻って、燭台切様にそっと唇を重ねた。
『(少しでも体力の温存をしないと)』
燭台「！ん………ぅ」
『(今は私が…………)』
燭台「………ｺｸｯ…………？ぁ、る………じ」
『すみません、いきなり水を
飲ませましたが……大丈夫ですか？』
燭台「………い、や……」
『(よかった)』
霊力もついでに送ったけど………
燭台切様の顔色は悪いまま。
このままじゃ………
その時、シャラッ………と言う音が私の耳に届いた。
敵………？妖怪か、あの祟り神か。
私は燭台切様を庇いつつ、警戒態勢となる。
まずい。今、燭台切は動けないのに………！
『(私だけでも、迎え討つか………？)』
グイッ
燭台「ｯ………」
『わっ！？………し、燭台切様？』
燭台「離れ、ないで………」
『！そんな、無茶ですっ』
燭台「…………」
私の腕を引っ張って、彼は鋭い目で辺りを見渡す。
座りつつも、刀を片手で鯉口を切りながら
私を守る体制でいる。
シャラッシャラッと、その音は近づいて来る。
何とか、何とかしないと燭台切様が本当に………！
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作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2020年6月28日 10時
