拾参話 ページ14
彼……萩原さんが動く度に
ゆったり動く彼の首筋から伸びる、
光りの尾。
それは、私にもあるもの。
“神との繋がりを示す物”だ。
彼の気配も変わったもので………まるで……
??《おい、良彦！！何を寄り道しておるのだ！！》
そこまで考えていた思考は、
とある声によって遮断された。
小言を告げるその声の主は
萩原さんの足元から聞こえて、
私は彼の足元を見た。
そこにいたのは狐………喋る狐だった。
あれ？何かデジャヴ………
本丸にも喋る愉快な狐は居る。
しかし目の前にいるその狐は
本丸にいるお供よりもずっと体が大きな狐だった。
野生の狐よりも少し大きいかも知れない。
いや、それよりこの狐からは神気を感じる。
と言う事はつまり、この狐は神様……
『………き、つね……？(稲荷様の神使、じゃないよね)』
萩原「え、は？………えっ、と、
もしかして“見える”んですか？コレが……？」
??《む？お主はわしが見え……
ﾊｯ！いいや、待て良彦っ！
わしを“コレ”呼ばわりするとは何事か！！》
『！！(もしかして彼は、私と同じ御用人？)』
───────────────
『ごめんなさい、名乗ってませんでしたね……
訳あって本名は言えないんですが、
“九重”と呼んでください』
萩原「ああ、何かご丁寧にども……
しかしまさか同じ御用人に会うのは初めてだな」
『私も初めてでした。会えて光栄です』
その後、私と萩原さんは私が覗き込んでいた
ベンチに座って自己紹介をした。
まさかとは思っていたけれど、
萩原さんは私と同じく御用人の役目を
持っているらしい。
彼に小言を言っていたあの狐は“方位神”と呼ばれる
立派な神の一柱らしい。
その毛並みから“黄金”と呼ばれているようで、
非常にモップモフな神様だった。
彼は萩原さんの御用人としての教養する
マスコット的な立場？？？らしくて、
萩原さんが話す度に黄金様はガミガミと
萩原さんを叱っていた。
しかし黄金様は甘い物には目が無いようで、
萩原さんが懐から取り出した羊羹を
黄金様の口に向けて突っ込んだら
彼の狐様は大人しくなってそれはもう
幸せそうに羊羹を召し上がっていた………
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作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2020年6月28日 10時
