参拾玖 ページ41
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??「兄さん、大丈夫？
妖怪に追っかけられたって聞いたけど」
七緒「うん、平気だよ。ありがとう」
??「兄さんは妖怪とか変なのとかに
狙われやすいんだから、気をつけてね」
七緒「それは君もだろう？君は特に神に敏感なんだ。
攫われないように気をつけなければいけないよ」
??「もう。兄さんに言われたくないなぁ」
穏やかで明るい子だった。
優しい太陽の陽光のような、
そんな温かさを纏う様な少女だった。
そう言う子だったんだ。
だから、きっと“審神者になりたい”と、
願い出たんだろう。
───────────────
七緒「審神者になる？」
??「そう。審神者になって、歴史を守る。
そうすれば兄さんの負担も減る。
兄さんは妖怪祓いの家の大黒柱になるんだから、
私にも兄さんを守らせて」
七緒「でも、危ないよ。刀剣も付喪神だ。
俺と同じように君を狙う神も居るんだよ？」
??「それはそれで誇らしいよ。
兄さんと同じ力で兄さんの未来を守れるなら。
七重家の人も認めてくれたし、
この有り余った霊力使えるなら
審神者って私にぴったりじゃない？」
俺は心配だった。当時の俺は神隠しされかけた
過去もあったから、気が気じゃなかったよ。
妹が戻ってこなくなったらどうしようと。
でも彼女を止める者は居なかった。
彼女の事を七重家の娘として誇り称える者も居れば、
見える人間であるからと、妹を除け者扱いする
人間や
“俺の後に生まれたおまけ”としか見ない者など、
当時の七重家にはそんな人間しか居なかった。
誰も、彼女を“彼女”として見なかった………
それでも彼女は家族として俺を支えて
守ろうとしてくれたんだ。
??「父さんも母さんも病気で死んじゃって、
居なくなっちゃったし。
………私にはもう兄さんしか居ない。
兄さんだけは守りたいんだ。
だからお願い兄さん。守らせて？
弱い私が兄さんにしてあげれる、
唯一の方法なんだ」
七緒「ｯ………」
??「それに、ようやく“おまけ”から“私”として、
兄さんを守れる。
じゃあね、兄さん！私、応援してるから」
その日、俺に背中を向けて七重家から出ていく
妹を………俺は見届けることしか出来なかった。
ただひたすら、彼女の幸福を願うばかりで。
七重家の屋敷の窓から、手を振ることしか
当時は出来なかったんだ。
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作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2020年6月20日 10時
