【刀剣乱舞】その縁、巡りゆく定め (ページ46)

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+主との思い出の話+ 肆ページ46

こんな情けない姿を主に見せては。

しかし体が動かない。
腕で顔を隠すことしか出来ない己が、嫌だった。

『長谷部、様』

長谷「お許し下さい、主……どうか、俺を………」

『？』

長谷「あの、娘を……“主”と認めたら、
貴方が消えて、しまいそう、で。

忘れたく、ない。貴方を。
だから、どうか主……」

『…………長谷部様、隠さなくていいんですよ』

その時、彼女は顔を隠していた方の俺の手を取った。
驚いて俺は主である夜蝶様に視線を移す。

彼女は笑った。優しく微笑む彼女は、
ゆっくり俺の手を握り、目を閉じる。

じんわりと……やけに寒く感じていた体に
霊力が流れ込んでくるのが分かった。
暖かく、熱でほてる俺の体を冷やすように、
寒く震えていた体を温めるように………
ゆっくりゆっくり……心地の良い何かが俺を包む。

呼吸が楽になった。
息詰まっていたものが取り除かれ、
体に重くのしかかる黒くて大きなものが
徐々に軽くなる。

………心が、安らぐ。

『大丈夫、大丈夫。貴方は一人じゃない。
夜蝶さんはきっと………貴方を許してくれますよ。

消えたりしない。それともあの人達は、
許さないと言うような人達でしたか？』

長谷「………」

『もう、休んで。抱えないで………
貴方にのしかかるものは、
全て背負う必要はないのだから』

良いのだろうか。
嗚呼、貴方がそう仰るならば……

いつか、許される時が来るなら、
九重と向き合う日が来れるだろうか。

己のけじめがつく日が訪れるなら、
真っ当に………今度こそ彼女を“主”と
呼べるように、なりたいのです。

そうしなければ、前に進めない。

紅羽様、夜蝶様。
この長谷部………貴方達を忘れません。
絶対に忘れません。

だからどうかお許し下さい。
前に進む事を。

“新たな主”と共に、

かつての貴方との日々を胸に………

過去ではなく、未来を選ぶ事を。

しかし、今だけはもう少しだけ…………

そうして意識が遠退く際、
最後に見たのは、微笑むかつての主達の笑顔だった。

そんな、愛しい夢を見た。