【刀剣乱舞】その縁、巡りゆく定め (ページ43)

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+主との思い出の話+ ページ43

長谷部side

“長谷部ー！はーせーべー！！”

“うふふっ、引っかかったー！”

“夜蝶、動き回るな”

“長谷部、この書類を政府に………”

『長谷部様？』

長谷「！………なんだ」

『どうかされました？』

長谷「いや、何でもない」

穏やかな日々が続く。
そして、今でも思い出す。

忘れられない思い出が。忘れたくない光景が。
今でも時折俺の頭を過る。

今日の近侍は俺だ。
新たな審神者である九重の指示に従い、
俺は書類を片付けていた。

そんな中、九重は少し不安げに俺を見つめながら
そう声をかけてきた。
いけない。らしくなく、ぼんやりとしてしまった。
九重は妙に勘がいい。
変に心配されても困るから、
俺は直ぐに答えを濁らせた。

『そう………ですか？
最近、ちょっと色々ありましたし、
疲れてはいませんか？

無理しないで休んでくださいね』

長谷「心配はいらない。これくらい何ともない。
近侍だからな。仕事は片付けなければならん」

『でも、少し顔色が良くないです。
何か、あったんですか？』

長谷「大丈夫だ。手を動かせ九重」

『………はい』

…………今の本丸は九重のものとなった。
ここにはもう、前任の彼らは居ない。
だが俺の主はあの方達だ。
新たな審神者を“主”とは………呼べない。

そう、直ぐに………切り替えられるほど、
以前の主との縁は、脆くはなかった。
だから俺を受け入れた審神者の事は
“九重”と呼ばせてもらっている。

正直複雑だ。
俺は確かにこの人間を主従を誓ったが、
俺の中にはまだ二人の存在が大きかった。

だから……中々振り解けないでいる。
穏やかな時間を過ごす度に、
“二人がまだ生きているのではないか”………とか。
時折そう錯覚してしまう。

『では、資源の管理と、明日の出陣について……』

“長谷部、ちょっと休まない？”

“貴方働き過ぎよ”

“夜蝶、君は休み過ぎだ”

“働き過ぎる馬鹿にはなりたく無いわよ”

“仕事はちゃんとやってるからいいでしょ？”

だから、呼べない。
九重を“主”と呼んでは………

二人を、裏切っているような気がしてならない。
この身を得て、主従を最初に誓ったのは、
確かにあの二人だったのだから。