【刀剣乱舞】その縁、巡りゆく定め (ページ29)

今日:2 hit、昨日:3 hit、合計:63,831 hit

†漆佰陸拾捌† ページ29

どうして俺は桜真として
生まれたんだろうか。

見えるせいで、普通の人間のようには生きられない。
普通の人間でありたかった。
普通の暮らしをしたかった。

普通の幸せが、羨ましかった。

愛してくれた姉が何故。
ようやく幸せになれは筈なのに。

ﾂﾑｸﾞ「…………幾緒が、羨ましいよ」

七緒「ツムグ？」

ﾂﾑｸﾞ「よく、審神者として生きれるな………
俺も中途半端な力だけじゃなくて、
いっそお前ぐらい桜真の力が強かったら………

何でも守れるのに」

七緒「………俺も君みたいな
優しい奴にはなれないさ。

同じ桜真でも、俺と君は違う。
実際に君の姉さんは守れなかった………」

ﾂﾑｸﾞ「お前でも、失敗するんだな」

七緒「人間だからね」

ﾂﾑｸﾞ「…………人間、か。
なら俺はどうしたら良いんだろう？
どうしたら良かっただろう」

自分の中に流れる血が憎かったよ。
憎くて憎くて仕方なかった。

自分の価値が見いだせなくて、
俺は途方に暮れていたんだ。

───────────────

黒田「桜真の血縁者様は大変だなぁ？
だははははっ！！！」

ﾂﾑｸﾞ「刃………お前のそのデリカシーがない所を
何とかした方がいいぞ」

黒田「だって俺には関係ねーし。
俺は桜真じゃないから、
お前らの苦労とか知らねーし」

ﾂﾑｸﾞ「ﾊｧ………」

黒田は全く相談には乗ってくれない。
ただ酒をかっ食らうだけ。

俺の奢りなのに遠慮がない。
行きつけの居酒屋の机に、
溜息をつきながら俺は顔を伏せる。

幾ら幼馴染とはいえ、
それは無いのではないだろうか。
一応、親友だろう？
黒田がつれなくて泣くしかない。

黒田「俺は桜真じゃないが、霊力が高めだからなぁ。
お前らとは違って、自分の力だしなー！」

ﾂﾑｸﾞ「うわ腹立つぞ」

黒田「いつもの事だろ？」

ﾂﾑｸﾞ「…………」

黒田「だから俺に同情とか求めんのは間違いだぜ？
俺は同情も、遠慮も、
かけてやる言葉も知らねーから」

ﾂﾑｸﾞ「知ってる」

黒田「だから、溜まったもんを
聞いてやる事しか出来ねーからな？」

ﾂﾑｸﾞ「………知ってる(お前が優しいのも)」

不器用な男だった。
優しさが遠回しにしか言えないから、
こう言った言葉しか出ないのも俺は知っていた。

この男には敵わないと思っている。
幾緒も、刃も、正しいことしか言わないから、
俺は気を楽に話せた。

彼らがいたから、俺は今でも頑張れた。