†陸佰漆拾漆† ページ19
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燭台「あれ、主。
まだサトリ君と一緒にいたの？」
『燭台切様』
戻ってきても、主はサトリ君の傍にいた。
縁側で、夕日が差す中で………
サトリ君の頭を撫でながら。
その背中が、何故か小さく見えた。
燭台「ちょっと細かくしてみたよ。
豆腐くらいなら食べれるかな」
『ありがとうございます。私の我儘で』
燭台「ううん。僕も気になっていたから。
あ、ちょっと食べたよ。良かった」
『…………昔』
燭台「？」
『昔一度、今と同じように
私に取り憑いた覚の子がいたんです』
燭台「え、そうだったの？」
『はい』
主は、そう言って………ポツポツと語り始めた。
懐かしむように、弱ったサトリ君の頭を撫でて。
妖の知識は確か、黒田君から聞いていたんだよね。
『その頃の私は………神や妖怪が怖くて。
公園で私を真似て化けて出て来た覚の子を
突き放してしまったんです。
寄って来ないように、結界も張った。
身を守るために………
でも翌日、やっぱり気になってて、
追い出した覚の子を見に、
公園を見に行ってみたんです』
燭台「………それで？」
『…………死んでいた。
他の妖怪に喰われてしまっていて。
その時の覚の子は小鳥に化けていたんですが、
直ぐに覚の子だと気づいた。
あの時、突き放していなかったら、
あの子は助かっていたかも知れない』
燭台「！」
『血塗れの小鳥を見た時、酷く虚しくて。
凄く申し訳なくなって………
せめてこの子は………生きているなら』
燭台「(だから)」
だから、死なせたくない、か。
小さな人間の女の子が、
妖怪が妖怪を喰らう現場を見て……酷な話だ。
それでも覚の子を思って………泣いていたのかな。
彼女が優しいのは、幼い頃からのようだった。
自分のせいだと………
”もう、自分を責めないで“
嗚呼、今なら分かるよ。
君が僕にかけてくれた言葉の意味が。
僕は彼女の頭に手を伸ばした。
サトリ君を撫でる彼女の手が止まった。
目を見開いて、僕を見つめる綺麗な黄昏の瞳。
今の空と同じ瞳が、僕を映す。
君は、その目で色んなモノを見てきたんだろうな。
燭台「………出来る事をしよう」
『…………はい』
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冷泉 雪桜(プロフ) - 雨宮@たふるさん» コメントありがとうございます。これからもよろしくお願いします (2020年3月12日 13時) (
レス) id: 18535e1a43 (このIDを非表示/違反報告)
雨宮@たふる - いつも楽しく読ませてもらっています。続編おめでとうございます。たまに来る燭さに、にきゅんとしてます！これからも頑張ってください。応援してます。 (2020年3月7日 15時) (レス) id: 3cde28d88e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2020年3月5日 19時
