†陸佰漆拾伍† ページ17
僕はいつも、失敗ばかりしてきた。
判断を誤って、大切だった主を
自分の手で壊してしまった。
今隣にいる伽羅ちゃんも、
下手をしたらいなかったかも知れない。
今でも離れない僕の中にある錆。
消えることのないもの。
どうしてもチラつくんだ。
だから、怖い。
壊さないために、失わないために。
伽羅「…………」
燭台「僕って本当に臆病だよね」
伽羅「あんたは自分で自分の首に
刀を向けるような事をするんだな」
燭台「その方が、よっぽどマシだよ。
自分の身で補えるなら、ずっといい………」
伽羅「………そうか」
この感情の事はよく分からない。
でも一つだけ分かったことがある。
この感情が“私欲”の一種である事だ。
僕らの本質は所詮は“物”だ。
欲はあるけど、それは人の体を授かってから
人の体に必要な欲。
食欲や睡眠欲と言ったもの。
そして武器ならではの斬殺欲。
でも、僕の“これ”は………
それらとは一致しない欲だ。
何で自分にはこんなものがあるのだろう。
必要のない物の筈なのに。
燭台「どうしたらいいのか、分からないんだ。
伽羅ちゃん…………どうしたらいいんだろう」
伽羅「さあな。同じ物のあんたが
分からないなら、俺にも分からん」
燭台「だよね………ごめん」
伽羅「…………言えるとすれば、
あんたはもう少し、周りを見たほうがいい」
燭台「えっ………周り？」
伽羅「存外、身近に答えがあるかもな。
………そろそろ部屋に戻る」
伽羅ちゃんは静かに僕の言葉に耳を傾けてくれた。
嗚呼、彼の言うとおり、
少し口にしたら気が楽になったような気がする。
変に気を使わせちゃったかな………
僕は立ち上がった伽羅ちゃんを呼び止めた。
燭台「ありがとう、伽羅ちゃん。
話を聞いてくれて」
伽羅「…………俺は何も聞かなかったからな」
彼はそう言って少しだけ口元を緩めて、
その場を後にした。
結果的には何もわからないままだけど、
彼なりの優しさが伝わって、
胸のあたりがじんわりと暖かくなる。
長谷部君も大概ではあるけど、
伽羅ちゃんも不器用だ。彼らしいけど。
………今までなら、僕は抱えていたんだろうな。
これも主のおかげ……か。
自分に嘘を吐く癖、直さないと。
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冷泉 雪桜(プロフ) - 雨宮@たふるさん» コメントありがとうございます。これからもよろしくお願いします (2020年3月12日 13時) (
レス) id: 18535e1a43 (このIDを非表示/違反報告)
雨宮@たふる - いつも楽しく読ませてもらっています。続編おめでとうございます。たまに来る燭さに、にきゅんとしてます！これからも頑張ってください。応援してます。 (2020年3月7日 15時) (レス) id: 3cde28d88e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2020年3月5日 19時
