弐拾参 ページ9
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「………あんたは……」
『(誰か居る………)』
今日、実弥さんの家に来たら正門の前で人にあった。
黒の短髪の青年で、手に包みを持っている。
「不死川に用か?」
『………、』
「そうか。どうやら留守みたいだ。所であんたは………?」
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その青年と近くの甘味処に入った。
その人は“冨岡義勇”と名乗った。
実弥さんとは旧知の仲らしく、時折交流があるのだという。
彼は片腕を無くしているが、左手で器用に餡蜜を食べていた。
「声を失っていたのだったな」
『【昔の傷で】』
「そうか。不死川とはどんな関係だ?」
『…………、【つい最近の話なのですが、
男に絡まれていたところを助けてもらったんです。
その日から仲良くなりたくて、彼の家に。
特に用がある訳じゃないのですが】』
「そうだったのか」
『【義勇さんは】』
「あいつはおはぎが好きなんだ。
知り合いが多めに分けてくれてな。お裾分けに」
『(おはぎ、好きなんだ………)』
そう言えば確かに最初お礼に渡したのは団子だったが、
甘い物が好きなのかもしれない。
意外な一面を知って少し、可愛いなとも。
すると、ジッと義勇さんはこちらを見てきた。
………御口にその……黒糖の蜜がついてるのだが。
「あんたと、何処かで会ったか?」
『…………』
「…………」
『………、……』
「…………いや、何でもない」
「!お前、冨岡ァ………」
そこに声をかけてきたのは実弥さんだった。
彼は義勇さんの姿を見て、ギョッとしていた。
手には魚とか野菜とかがあって、
どうやら買い出しに出ていたらしい。
買い物なら私もしていたのだが………義勇さんの為だろうか。
「Aも………何してんだァ」
「さっき知り合った。不死川の家の前で」
「ああそうかィ………というか口が汚ェ。真っ黒じゃねぇか」
「不死川にお裾分けだ。おはぎを貰って来たから食べよう」
「今の流れでかァ、甘味処で言う事じゃねぇだろォ……」
『(な、何か言わないと……)
【お二人は仲が良いですね】』
「何処がだァ」
「嗚呼、腐れ縁という奴だろうな」
「………ハァ……言ってろォ」
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作者名:冷泉 雪桜 | 作成日時:2023年7月1日 1時