風前の灯 ページ32
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泣き崩れ、失った声を絞り出し、貴方の名前を呼び続けた。
『ッ!』
その時──
一陣の風が吹いた。
日が沈み、まだ夕日の面影が残る夜となった。
風が、私の頬を撫でた。
風に吊られて顔を上げれば、あれほど、
恐ろしいと思っていた夜に浮かぶ月が見える。
………嗚呼。
『(実弥さん)』
私は、貴方に会えて。
貴方と過ごしたこの一ヶ月の、短い時間。
幸せでした。
そう、貴方はもう。
風柱では無く、不死川実弥さんとして。
生きてくれた。
ありがとうございました。
幸せな一時をくれて──
『(ずっと………ずっ、と…………
貴方をお慕いしておりました……っ)』
これは、風柱だった人と、
元鬼殺隊・隠の所属だった私の、一ヶ月の物語──
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作者名:冷泉 雪桜 | 作成日時:2023年7月1日 1時