弐拾捌 ページ4
･
『………(あれ……？)』
また次の日。
結局、どういったお礼を返せばいいか分からないまま、
そのまま彼の住居へと足を運んでいた時、
その人の住居に続く道で、男の子が泣いていた。
私が駆け寄ると、その子は足を怪我しているようで、
草履の鼻緒が切れている。
鼻緒が切れて、転んでしまったらしい。
わんわんと泣いている子供に、私はどうしたら良いか分からず、
とりあえず頭を撫でて、手当をする。
『(手当は出来たけど………)』
「わぁぁあん！あぁぁ！痛いぃ………、ﾋｸﾞｯ」
『【もうだいじょうぶ。いたかったね】』
「わぁぁあああん！！」
『(そうだよね………字がわからないよね……)』
四・五歳くらいだろうけど、
まだ字を覚えるには小さい子供に見えた。
どうしよう、こんな時声を出せたら………
この子を宥める言葉をかけれたけど。
どうしたら良いか、分からない。
周りを見ても、親らしき子はいない。
助けを求めたほうが………でも、放って置けないし。
「何だ、お前か」
『！(あの人だ)』
その時、背後から声がした。
振り向けば最近よく見るあの人で、
その人は私と子供に近づき、交互に見た後
状況を何となく理解したようで、
子供の視線に合わせるようにしゃがむ。
「どうしたァ坊主。転んだのか？
もう怪我は手当して貰ったろォ」
「痛いよぉ………」
「そうかそうか、痛かったなァ。
お前、近所の米屋ン所のだろォ。
妹と母ちゃんが探してたぞ」
「ﾋｸﾞｯ………おっかぁが？」
「母ちゃんと妹に心配かけるなァ。
男だろォ。男は強くならなきゃな。
泣いてばかりだと強くなれねぇぞ」
「ｯ………ゔ、ん」
「よしよし、いい子だ。ほら、早く帰ってやんなァ」
彼は男の子の頭を撫でて、そうあやすと、
男の子はピタリと泣き止んだ。
小さな子をあやすのに慣れている様子だった。
穏やかに微笑んだ彼は立ち上がって、男の子の背を押すと、
男の子は「ありがとう」と言って、その場を去っていった。
また、彼に助けてもらった。
『………【助けてもらってばかりで、すみません。
ありがとうございました】』
「いや、礼ならこっちだ。
あいつの親が探していたし、手当もしてくれてたろ。
俺は手先がこれだから、代わりにしてくれて助かった」
『【子供、好きなんですか】』
「………昔は下の兄弟が居たからなァ」
『…………』
･
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 27人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2023年7月1日 1時
