伍 ページ27
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『【体の調子はどうですか】』
「悪くねェ」
彼は一人で起き上がるのがきつくなってきたのだろうか。
昨日目覚めてから、彼は普段通りの素振りを見せていたが、
一人で起き上がろうとすると、少し時間をかけてゆっくりと
起き上がるのだ。
私は彼を支えれば、ようやく彼は立ち上がる。
『──、』
「無理はしてねェ。動かねぇと鈍っちまう」
『…………』
「その辺り散歩してくらぁ。
歩けるから、少し一人にしてくれ」
『──。………』
「？………あァ、分かってる。ちゃんと帰る」
そう言って、彼は一人外へと行ってしまった。
本当は着いていきたいが、
誰にだって一人になりたい時は、ある。
私もそうだったし、一人になりたいなら、
今はそっとして置くべきだと思う。
本当は、昨日起きたばかりだったし、
あんなに苦しんでいたのに、なんとも無いような顔をして、
本当に大丈夫なのか………とか、
お医者様にまた診て貰った後だし、
無理に体を動かしたらいけないのでは、とか。
色々考えたものの、彼の眼差しを見た時、
敵わないと思って………結局私が折れてしまったのだ。
本当に不思議なことに、倒れる時あんなに苦しそうに
呼吸を荒げていたはずが、今の彼は何処か清々しく、
そして非常に穏やかな雰囲気を纏っているようにも見えたのだ。
………風が彼をさらってしまうのではないか。
そう、錯覚してしまうほどに。
─────────────────────
暫く待ったのだが、彼は戻ってこない。
流石に、これ以上は心配が勝ってしまい、
探しに行ってしまった。
しかし思いの外、早く見つかった。
河川沿いの草むらに、彼は座っていたのだ。
ほっと胸を撫で下ろし、私は背後から彼に近づく。
「………俺はよォ」
『(き、気づいてた………)』
「別に俺自身の幸せなんざ、考えた事無かった。
ひたすらに、ただ一つを願っていた………
その為に戦い続けた。………結局、守れなかったが」
『………』
「だが弟………玄弥が、言っていた。
”幸せになってほしい“ってな。
勿論それに応える為にも、その努力はしてみたが……
分からなかった。だがよ──」
『……、………』
「A……俺は、お前が俺に向けてる気持ちに、
応える事は出来ねぇが………一つ、お前に言える事がある」
“幸福ってのはきっと一人じゃ出来ねぇ事だと、
お前に会えて知れたんだ”──
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作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2023年7月1日 1時
