検索窓
今日:12 hit、昨日:33 hit、合計:6,356 hit

ページ26










朝。

実弥さんが眠る部屋に、いつものように入った時。
眠っていた彼の瞼が、僅かに開かれていた。











『(目が、覚め………、)』



「………?A、かァ……?」



『っ!!』











思わず駆け寄る。
熱を測ったり、体に異常がないか確かめたりして、
そして少し痩せてしまった彼の手を握る。

目を、覚ましてくれた。意識が戻った………!
良かった、本当に良かった………

あのまま死んでしまうのではないかと思った。
ボロボロと涙が溢れて、頬を伝う。










「………心配……かけた、なァ………」










彼の手を握って泣いていると、彼は掠れた弱々しい声で、
それでも手をしっかりと握り返してくれた。

しかし握る手がとても弱い。
それでも彼は私を安心させようとしてくれているように、
私の手を握った状態で、私の手をゆっくりと撫でた。


その手つきが、優しくて。………優しすぎて。












「………ずっと、呼びかけてくれてただろ……?
ありがとう、なァ………随分、世話になっちまった………」


『ッ………、』


「あー………腹、減ったァ」


『!………、』










お腹が空いている、というのは生きている証拠。
目を合わせて話せているのは、彼がまだそこに居るという証。

彼の遠くを見るかのように力なく、しかしいつもの調子の
口調で空腹を訴える姿が、堪らなく愛しく思う。


きっと、私が泣いているから、どうにか涙を止めようとして
彼なりに考えた言葉だろう。
私は涙を拭いて何度も頷いた。


そして忙しなく、パタパタと勝手場へと急いで、
直ぐに食事の用意を始める。












(「…………もう……潮時、だろうなァ」)













伍→←漆



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (21 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
27人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃 , 不死川実弥
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:冷泉 雪桜 | 作成日時:2023年7月1日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。