玖 ページ23
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お医者様に来ていただいて、実弥さんの様子を見てもらったが、
原因が分からないとの事だった。
体を調べてみた所、まるで急激に歳をとったかのように、
筋肉や臓器の活動が衰退している、らしい。
これが、恐らく実弥さんが言っていた、
「痣者」が持つ、力の代償………
本来人生にかけて使うはずの力を極限にまで引き出し、
力の前借りをするという、痣の代償。
それが、実弥さんが持つ………宿命。
『…………』
お医者様が帰られて、私は眠る実弥さんの傍らで
彼の様子を見ていた。
意識が、戻らない。
今、ちゃんと呼吸をシているのかさえ、
不安で不安で、定期的に呼吸を確かめる。
………“その時”が、近づいている。
胸が、握り潰されるような感覚だった。
死んでほしくない。まだ、死なないでほしい。
そう、思うのは………いけないことなのでしょうか。
『(実弥さん………)』
「……………」
──いや、弱気になっては駄目だ。
いつか、こうなってしまうことは、私も理解した上で
彼の側にいたいと願った。
そう“あの時”のように──
自分にできることをするんだ。
『(実弥さん、私は信じている。
貴方を信じ、出来ることをします。
だから、戻って来てください)』
このまま別れるのは、嫌ですからね。
ちゃんとお別れを言って、胸を張って言ってください。
“幸せであった”と──
私は、貴方の人生を、不幸な人生だとは思わない。
だって、貴方と過ごした日々で分かったんです。
貴方はきっと、そんな事を思っていない。
きっと、言わなきゃ駄目なんです。
弟さんも………きっと、私と同じ事を願っている。
だから貴方はまだ、死んではいけない！
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作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2023年7月1日 1時
