拾陸 ページ16
先が、残されていない。
実弥さんの寿命が、もうすぐ尽きようとしている。
昨日のその言葉が、常に頭にあって………衝撃的だった。
どうしてかな。
あの人の事を、本人から全て聞いたのに。
満足していない自分がいる。
どうして、どうしてあの人だったのか。
これまでずっと、鬼を滅し………ただ一心に、
一人の弟を守る為に、生きていた人が。
弟を失い、更にはあまりにも短すぎる寿命。
神というのは無慈悲だ。
何故その運命を、あの人が背負わないといけないのか。
そんなことばかり考えて………
流石に今日は実弥さんの家に行くことが出来なかった。
だってきっと………考えて、
考え抜いて私に話してくれたのであれば、
それを無下にするような事はできないと思ったから。
『…………、』
「あら？貴方、大丈夫？？」
『！』
川辺で考え事をしながら座り込んでいた時、
後ろから声をかけられた。
振り返ると、そこには綺麗な女性が三人居て、
心配そうにこちらを見ている。
「顔色が悪いわ。具合が悪いの？」
『──、………(この人達は……)』
「え、ええっ！？目が真っ赤じゃないですか！！
泣いてたんですか！？大丈夫！？！？」
「ちょいと須磨！もうちょっと落ち着いたらどうなんだい。
驚かせちまうだろうが！」
賑やかな三人だ。
一人は大人しそうで、私に駆け寄ってくれて、
一人はとても落ち着きのない子。
それから少し男勝りな人がいる。
するとそんな彼女達の背後から、長身の男性が現れる。
「おーい、何して──………？なんだぁ？」
─────────────────────
「お前が噂に聞いたAかぁ。
不死川から聞いてるぜ。通い妻だってなぁ？」
『【違います】……！！』
彼は音柱の宇随さん。
実弥さんと同じく、かつて鬼殺隊で戦った剣士の一人。
実弥さんから私の事は聞いていたらしい。
私は様子がおかしいと思ったのか、
彼なりに私を心配してくれていたようで、
隠す必要性もないと判断した私は彼に、昨日の事を話した。
「あー………成程なぁ……」
『…………、』
「…………なあ、提案なんだが──」
“明日、俺達と付き合え”
･
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 27人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2023年7月1日 1時
