検索窓
今日:16 hit、昨日:39 hit、合計:6,327 hit

拾漆 ページ15










「A」








翌日。
昨日のあの後は何も聞くわけでもなく、
聞かれるわけでもなくで、結局何事もなかった。
それから昨日は少し顔を合わせるのが、
何となく居づらくて、実弥さんの家に泊まることなく
宿に帰っていた。

そして今日。
何処か神妙な顔をして、私に声をかけてきた実弥さん。
縫い物をしていた手を止めて、私は彼の方へと振り向く。











「………話がある」










─────────────────────









「………俺の事を、知りたいと言っていたな」

『………、』


「いつか話さねぇと、って………思っていた」









改めて、彼と向き合って話をするとなると、
何処か緊張感が出た。
彼は言葉を慎重に選ぶように、語り始める。

自分が“鬼殺隊”という非公認の組織に居て、
鬼を滅する為の剣士であった事。
家族を殺され、唯一生き残ってくれた弟を守る為、
憎き鬼を全て滅する為に、鬼殺隊に入った事。
最終決戦で、弟を犠牲に強敵を倒した事。
死闘の末、鬼の祖を倒すことが出来た事………


全てを話してくれた。











『………』


「………鬼を殺す為には、犠牲は付き物だった。
捨てるものを捨て、選んだ先で得た力で………
鬼の祖を殺す事が出来た。

その代償として二十五を迎えた際、その命が果てる」


『!(それって………)』


「最近、体が動かなくなってきている。
今年二十五を迎えてから、少しずつ。

昨日お前が見たのがそれだァ………
俺にはもう、先が残されてねェ」



『(………あぁ……)』














この先、聞いてはいけないと………
私の中の警告が鳴り響いている。

そんな私の気持ちもつゆ知らず、彼は次のように告げた。













「ここに通うのは止めろ。
後先短ェような男に、付き合う必要はねェ。

………話すことは話した。俺の事を知りたかったんだろ。
ならもうお前がここに居る必要はねェ筈だ」





















「俺から離れれば──」









「お前は【泣かずに済む】だろ──?」












































ああ………、



ッ…………あ、ぁっ。











何て…………なん、て。










酷く、優しい、……言葉なのだろう………っ。














拾陸→←拾捌



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (21 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
27人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃 , 不死川実弥
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:冷泉 雪桜 | 作成日時:2023年7月1日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。