拾捌 ページ14
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結局、次の日もお世話になってしまった。
しかし、実弥さんは風邪引いた時の看病の仕方が
とても手慣れていたな………
そんな事を思いながら、布団を畳んでいた時だった。
ヒュッと何処か不自然な風の音がする。
太刀風………?素振りみたいな音。
何度も何度も、その風の音がしたので、
音を頼りに、音の下へと向かう。
シイアアアア
そこに居たのは、真剣を握る実弥さんがいた。
彼の口からは、独特の呼吸音が聞こえ、
構えると極限の集中力を高め、
そのまま振りかざしている所だった。
それは見事な太刀筋。
風邪を巻き込み、その太刀風によって音が響き渡る。
しかし──
「ッ、」
カシャン!と、突然彼は刀を落とした。
そのまま膝をついてしまう。
私は反射的に、自分が今裸足であることを忘れて、
中庭にて膝をついている彼に駆け寄った。
近くまで来ると、彼は両手を眺めていた。
ブルブルと手が痙攣している。
手の痺れ………?どうして、素振りをしていただけなのに。
『ウウッ!』
「!A、」
『!!(今、私に気づいたの?
いつもだったら直ぐに私の気配に気づくのに、)』
「心配ねェ。大丈夫だ」
『──っ、────、』
「だから大丈夫だって、言っ──
………お前、泣いてるのか?」
居なく、なってしまうのではと、思った。
何故か消えてしまうのではと、先程の風のように、
そのまま消えてしまうように感じてしまった。
近づいて、彼の背に触れた時、
ちゃんと居るのが分かって、ホッとした。
涙が、溢れる。
どうしてだろう、凄く怖かった。
凄く、怖かったんだ。
死んだ家族を思い出した。
また、一人になるのかと………
一度泣き出したら止まらなかった。
『ぅ、うぅ………っ、………ッ、』
「………泣くなよ……ほら、泣きやめェ………
お前に泣かれると、俺は………
どうしてやりゃいいか、分かんねぇんだ………」
一度躊躇いを見せた手が、そのまま私を包むように抱きしめる。
心臓の音がする。あぁ、まだここにいる。
生きている………
大丈夫…………ここに彼は、いる。
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作者名:冷泉 雪桜 | 作成日時:2023年7月1日 1時