弐拾 ページ12
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目が覚めれば、見慣れたような、でも知らないような。
天井なんて、意識して見たことなかったから、
何だか新鮮に思えた。
ここは、実弥さんの家だとそこで気づく。
頭がぼんやりしている。
ああ、熱があるんだなと、何処か他人事のように感じた。
この布団から起き上がる事ができないくらい、体が重く感じる。
「気がついたか」
『………ァ、』
「熱が下がらねェな………」
するとこちらに覗き込むように、実弥さんの顔が見えた。
手が額に乗せられて、気持ち良くて、少し恥ずかしい。
参ったな………彼を前にとても子供っぽい態度をしてしまった。
拗ねて、雨に打たれて風邪を引くなんて。
自業自得にも程がある。
自己嫌悪しつつ、恥ずかしくて毛布で口元を隠した。
「………お前が、昨日雨ン中に居たのは………
俺の態度が原因、か？」
『！』
「そうなんだろ？」
『………』
「あァ、筆談はいい。起き上がんのも辛ぇだろうが」
ああぁ……っ。
改めて言葉にされると逃げようがない。
図星を言われてますます恥ずかしくなった。
その時、枕元に居た実弥さんは胡座をかき、
私の目をその大きな傷跡だらけの手を置く。
『(え、実弥さんが、見えない………)』
「…………、悪かった」
『？』
「何かよ、冨岡の奴とやけに親しくしてる所を見て、その……」
『(義勇さん……？)』
語尾につれて、彼の声が小さくなっていく。
それは、つまり………そういう事？
私は目元に置かれた彼の手をそっと退けて、チラリと彼を見た。
そこには、赤い顔をし、胡座をかいた膝に肘を置き、
頬杖をしてるように見せて、顔を隠す彼が居る。
そっぽを向いていたけど、首と耳が真っ赤だった。
その赤は私にも移ったかのように、
彼のその姿を見て顔が熱くなる。
これは、認めざる負えない。
………彼が愛しいと、思った。
嗚呼、私はこの人に惚れていたのだ。
出会った、あの日から………改めて、彼のことが。
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作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2023年7月1日 1時
