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佰伍拾壱日 ページ10









小鳥遊邸付近の、とある温泉。








宇髄「………」

『………ん?何かな?』


宇髄「いや、誘っておいて何なんだが、
お前混浴には躊躇いが一切ないってのはどういうことだ……」










温泉に入るために着物を脱いでいたら
背後から宇髄殿にそう言われた。
いや、私が危惧していたのは奥方がいるのに
他人の私が共に入っていいのかであって、
別に混浴事態は然程重要ではない。

そう応えたら、宇髄殿は小首を傾げていた。
(逆に聞くが宇髄殿と奥方、
混浴前提で誘う宇髄殿もどうかとは思う)









『何だ、私の反応が見たかったのかな?』

宇髄「ま、否定はしない」


『はははっ、素直だな。残念だったね。
私は男士と一緒に居ることが多かったから見慣れているんだ。
おかげで「言葉も行動もお淑やかじゃない」と
言われるようになってしまったよ』


宇髄「そうかい」

『それにこの体ではね』










私は、体に刻まれた傷跡を眺めつつ、体を布で覆う。
腕に、腹部に、背中に………数多くの傷跡がそこにはある。
これは鬼に襲われた時の傷。
鬼殺隊に入る前、桜雲殿に助けられたあの日の傷。
特に臓器の一部が欠損するほどの大きな傷跡が残る
腹部は、肌の色が変わっていた。

こんな体の女を娶るような物好きは居ないだろう。
今更、隠す必要も無くなってしまった。


とことん自分自身に興味をなくした私。
もはや恥じらいというものもない。
どのみち、後先短い身だ。そんなものも必要ないだろう。










宇髄「、………お前、それで良く生きてたな」


『自分でも思うよ。ああ、もしかして気を悪くさせたか?
すまない、そこの配慮が足らなかったね。
えっと、隠せられるくらいの大きめの布は………』


宇髄「…………」






『!』







その時、初めての感覚に襲われた。
胸が、締め付けられるような感覚。
似たような感覚は知っているが、どこか違う。

宇髄殿の方へと視線を向けた時、これはまた驚いた。
白い髪であまり良く見えなかったが、
髪の毛の合間から見えた彼の顔は、初めて見た表情をしていた。


………何と説明すればいいのだろう。
言葉では言い表すには難しいような、歪めた顔だった。
知らない顔を見てしまって、
何と声をかければいいか分からなかった。











『………宇、髄殿?』

宇髄「………あいつらが待ってる。早く湯船に入ろうぜ」

『あ、嗚呼………』











………何て、声をかければ……良かったのだろうか。

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作者名:冷泉 雪桜 | 作成日時:2023年6月22日 15時

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