佰参拾壱日 ページ30
私が率いる隠達は皆優秀だ。
特に今回派遣させたのは、情報収集に特化した精鋭達。
間違えることなんてありはしない。
しかし、彼らが京都へ何をしに向かったのか、
結局わからないままであった。
京都にわざと出向き、関東地方で何か騒ぎを起こす、
といった陽動も考えて、こちらも鬼殺隊本部である
産屋敷家の屋敷を中心として護衛かつ、
捜索を行っていたものの、空振り。
なんの目的で鬼達が京都へ出向いたのか、分からない。
悲鳴「お前達が見た鬼は、何をしていた?
様子はどうだった??」
桜雲「そうだねぇ………強いて言うなら
“何かを探していた”様子だったようにも見えた。
捜索に特化したような血気術を使う鬼が多かったよ。
例えば、人が持っている記憶を頭から
文字のようなものとして具現化して引き出す、
みたいな鬼とか居た」
宇随「嗚呼、そういやそんな奴もいたな。
隊士の一部がその鬼によって記憶の改竄をさせられ、
同士討ちになりかけていた。
味方を敵だと思わせる、みたいな血気術でもされたんだろうよ。
他にも似た血気術を扱う奴らが多かった。
まあ、全部派手に頸を落としてやったがな」
『…………』
宇随「………結局、目的は全く分からなかったが、
“何かを探していた”事は間違いねぇ情報だぜ」
“何かを探していた”──
一体何を?無惨が目立つ行動を起こしたのは数百年ぶりだと
お館様より聞いた。
あれほど巧妙に姿を隠していた無惨が、
そこまでして手に入れたい何かがあるのかも知れない。
考えてもわからないことばかりだ。
『………少し興味があるのは、鬼が“恐怖”していることだね。
無惨についての情報を鬼から聞き出そうとしても、
宇随殿が言うように、やはりどの鬼も口が
裂けても言うことはない。
それが不思議でならない』
桜雲「おかしな事言うねぇ、あんたいっつも。
当たり前だろうさ。組織はそんなもんだろうよ。
上役に何されるか分からないんだから」
『確かにそうだ。それはよく分かるよ。
でも、それならば普通に考えて“解放されたい”と思う筈。
鬼とて元は人間だ。感情は根本的には変わらない。
それは私が一番良く知っている。
そのように心理的観点から、
自白するように鬼に問うてみた時があったんだ。
でも、自白する事はなかった………』
桜雲「?何がいいたいのさ」
『………鬼の間で、果たして無惨に対して
忠誠というものがあるのか、と。』
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作者名:冷泉 雪桜 | 作成日時:2023年6月22日 15時