五度 ページ6
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そらからまた何度か繰り返した。
そして、とある日からまた新たに分かった事がある。
知性、理性を会得した私は、
今度は自身が成り代わった
“鬼の末路”や“人だった頃の記憶”を見た。
鬼狩りに怨嗟と怒号を浴びせられながら、
四肢を斬り刻まれた鬼。
幸せな日々を一瞬にして壊され、狂ってしまった鬼。
無惨から与えられた血が痛みとなって、
絶叫しながら滅んだ鬼。
………私と同じく、僅かに理性を取り戻して、
自分がしてしまった事に耐えられなくなり、
自壊した鬼も居た。
度重なる痛みと、憎悪の記憶………
それが更に私の怒りとなった。
無惨
鬼舞辻無惨──
本来なら末永く幸せな日々を過ごしていたであろう人々。
お前さえ居なければ。生まれなければ。
お前さえ居なければ──
私はこの生き地獄を味わうことなく、
人として生きていた筈なのに。
許せるか。
許せるものか!!!!!
恨めしい………!
憎らしい!!
私のせいで、罪を重ねることなく死ねた鬼達や
死ぬはずがなかった人々には申し訳ない。
私がこんな血鬼術を持ち合わせたせいで、
私が成り代わった鬼達を生き長らえさせてしまった。
それでも、私は決めた。
ならば、私はこの多くの記憶を背負い、
必ずや無惨を葬ると誓おう。
だから、すまない。
私は、死ねなくなった。
無惨を葬るまで、死ねない。
力を貸してくれ──
無惨を倒したその日から、
もう生き長らえることは望まないから。
生きたいと、願わないから。
どうか、どうか。
生きる事を許してください。
無惨を倒すまで、許してください。
必ずや、地獄に堕ちるから。
必ずや、お前たちの無念は晴らすから。
全てを背負って、無惨を討ってみせよう──!!!
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作者名:冷泉 雪桜 | 作成日時:2023年4月18日 21時