三十九度 ページ41
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鳶寧の言葉を聞いた正直な感想を言えば
“そういうもの”という、他人事のようなものだった。
少し哀れには思うぜ。
感情を殺し、人を殺すという、ただそれだけの行為を
するだけの道具としか考えなかった親父や弟のようには
生きたくないと思った俺は、自分で選んで里を抜けた。
人らしく生きて死ぬ事。
極当たり前な事が出来ずに、人間として死ねないと思ったから、
嫁三人と共に、あの腐った里を出たんだ。
それは生き方の選択をした、ということ。
だが、鬼にはソレが出来ねぇ。
何したって、その無惨が思考を読み取り、
裏切りの兆しがあるとなれば殺される。
人を喰らいたい衝動に抗うすべもなく、
人を喰らわなければならない鬼は、人に恨まれ、
そして俺達鬼殺隊に殺される。
生き方を選ぶことが出来ねぇ。
そこはなんとも哀れだとは思った。
かと言って、同情は出来ない。
現に鬼は人を喰っちまっているからな。
眼の前に居る鳶寧だって、例外なく人を喰ってる。
許してはならねぇし、許されることがあってはならない。
世間様から見りゃあそうだろうよ。
………俺は鬼に個人的な感情はないが………
宇随「(………あいつと、全く同じ顔をしてるってのに、
中身が違うだけでここまで変わるもんか。
こんな人形みたいな地味な顔、あいつは見せなかった)」
鳶寧『………任務は終わりか？』
宇随「嗚呼」
鳶寧『そうか。では撤収しよう』
宇随「(だが………)」
小鳥遊の奴と、こいつは………
どこか似た雰囲気を纏っているようにも思えた。
勿論、小鳥遊はこんな根暗な奴じゃなかったし、
言ったように、能面のような面は見せることはなかった。
穏やかな東風を彷彿とさせるような女だった。
だが、鳶寧もまた同じようなものを感じる。
鳶寧には慈悲のそれがあるようで、
鬼を哀れみ、同情し、鬼の存在を嘆く様は、
小鳥遊がふとした時に見せる顔と同じような表情をする。
宇随「…………そうだな、撤収だ」
小鳥遊を東風とするなら、お前は………北風だな。
宇随side〜end〜
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作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2023年4月18日 21時
