三十四度 ページ36
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蟲柱「では、宇随さん。彼女の事、よろしくお願いしますね」
蟲柱はそう言って、その場を去った。
しばらく音柱が監視役ということだが、
この後何をするのだろうか。
そんな私の思考を読んだかのように、音柱がこちらに振り向く。
音柱「これから任務だ。お前も同行してもらう。
俺達鬼殺隊は暇じゃないんでね、
お前にも嫌でも付き合ってもらうぜ」
『………分かっタ』
音柱「任務先はここから西にある村で、
人が度々行方不明になっているらしい。
派遣した下の隊士共もやられたのか連絡が取れねぇ。
現地調査から始めっから、日が沈む夕方に出るぞ」
『嗚呼』
音柱「そういやお前、陽の下だとどれくらいで耐えれる?
個体差によっては、少しの間なら耐えられる鬼も居るが」
『そうだナ………鬼によっては曇の日でも嫌がるやつは居るガ、
曇であれば私はある程度歩けル。
肌を隠せバ、しんどいが陽の下でも歩けなくはなイ』
音柱「成程な。まっ、俺が居るから、
日が昇る前には終わるだろうが、
一応体を覆える程の布か何か持ってけよ」
そう言いながら、音柱は私の前をスタスタと歩いていく。
陽が昇る時の万が一に備え、確認をするとは。
幹部なだけあって、仕事のするべきことをする男らしい。
言われるがままに用意を済ませ、私は彼の背を追った。
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日が落ち、移動を開始した私達は、
目的地である村までやってくる。
村は物静かな、畑しか無いごく普通の村だった。
音柱は不意に地面に耳を済ませる。
音柱「…………活火山の近くだからか、聞き取り辛いな」
『聴覚に優れてるのカ』
音柱「まあな。だが、火山の地響きが時々して、聞き取り辛ぇ」
『…………なら、私も手を貸そウ』
音柱「?何する気だ」
『(………足跡………それから道ができているな)』
私はあたりの地面を見る。
畑が多いのであれば、それらを荒らす奴もいる。
私は数歩歩いた先の地面にしゃがみ、
人差し指を爪で切り、血を出す。
血がついたその指先を、地面に向けてトントンと軽く叩いた。
するとそこからベコベコと土が盛り上がり、中から骨が現れる。
骨はやがて組まれ、形を成し、毛が生えた。
地面より這い出たのは野犬。
血の色の毛を靡かせ、時折赤黒い血をボタボタ滴らせた
見るもおぞましい野犬が生まれる。
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作者名:冷泉 雪桜 | 作成日時:2023年4月18日 21時