二十九度 ページ31
実弥side
実弥「クソがァァァ!!」
風柱邸に戻り、庭の木に拳を叩きつけながら、
俺は怒号を上げる。
何でも良かった。この行き場のない怒りを、
何処かにぶつけたかった。
何なんだ。何だってんだクソが。
竈門禰豆子といい、あの糞鬼といい!!
鬼は殺す、存在しちゃならねぇ!!
宇髄やお館様の意見も分かる!
重要性も理解しているっ。
俺が、俺が許せねぇのは………
“私は人である事を誓うよ”──
人を、喰ったとき………あいつの誓いが、無駄に成ることだ。
俺の知る彼女はもう居ない。
分かっていても、あの糞鬼が人を食えば……
取り返しがつかねぇんだ!!
彼女を………守れなかった俺が………
唯一守れる彼女の誓いだってのに。
もしもあいつが人を食っちまった場合、
も、う、それは………彼女じゃなくなっちまう。
彼女の言葉が、離れない。
こんなどうしようも俺を、彼女は──
実弥「フゥー!フゥー!
(あいつ、躊躇いなく、藤の花を喰いやがってェ)」
ギリッと奥歯を噛み締める。
あの鬼も、俺の血を拒んだ竈門禰豆子と同じように、
誠意を示す為に、毒を喰らいやがった。
あれはもう、命乞いみたいなもんだろうが!!
自分だけ助かるために、毒を喰ったようなものじゃねぇか。
人を食ったことを悔やむ、嘆くだ?
ふざけやがってェ!!クソが、クソが!!
思わず頭を押さえた。
善人ばかりが死んでいく。鬼が居るばかりに。
俺はまた一つ、失った。
手から零れ落ちる命は、どれも大切なのに。
実弥「ハァハァ………、………くっそがァ……ぁ、」
視界が歪んだ。
ますます憎らしく感じた。
あれは、Aじゃねぇ。中身は全くの別物。
糞鬼がAの体を乗っ取った。
あの鬼が、彼女を地獄へと貶めるってんなら、
その前に俺が殺す。
あの鬼も望んでいたじゃねぇか。好都合だ。
少しでも人を襲う素振りをしたらぶった斬る。
血をすする瞬間に、頸を飛ばしてやる。
話が本当なら、まだあの鬼はAの体を奪ってから
人を食っちゃいねぇ。
まだ………醜い鬼なんざになってねぇ。
そうなる前に、本当に失う前に。
必ず、必ず頸を斬ってやる。
醜い化け物に、Aを渡してたまるかァ!
実弥side〜end〜
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作者名:冷泉 雪桜 | 作成日時:2023年4月18日 21時