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二十八度 ページ30

宇髄side








胡蝶「伊黒さんも言っていましたが、私も意外でした。
宇髄さんがあんな提案をするなんて」








蝶屋敷。
俺は“小鳥遊だったモノ”を抱えながら、
先頭を歩いている胡蝶の言葉に耳を傾けていた。








宇髄「さっきもその伊黒に言ったが、
情報を得れば直ぐにでも殺すべきとは思うぜ。
竈門禰豆子は兎も角として、こいつは状況が状況だ。

俺は合理的に且つ、効率を優先にする」


胡蝶「そこは貴方らしい所ではありますが、
私情も挟んではなくて?」


宇髄「…………私情ねぇ……」










俺は可能性を考えていただけだ。
利用できるものは利用し、活路を開く。
今までだってそうしてきた。

だが………胡蝶のその言葉に、否定しない自分も居た。











宇髄「(昔の事だってのに)」










里に居た頃を思い出した。
毒を食わされ、人を殺す訓練を重ね、感情を殺す。

地を這い、毒の花弁を喰むこいつが………かつてを彷彿とさせた。
それがよりによって、見た目が小鳥遊の姿そのものの鬼。
重い鎖に繋がれていた姿が、死んだ兄弟や俺のように見えた。

それが、堪らなく反吐が出るような光景だった。
それだけ。それだけの事だ。










宇髄「つか、お前こそ、こいつが血を吐いて
まだ藤の花を食おうとした所を止めてただろ」


胡蝶「あれ以上藤の花を食べれば、
治癒能力の低下の恐れもありましたからね。

しかし、小鳥遊さんの体を乗っ取った鬼の
精神力には驚かされましたね。
伊黒さんや不死川さんも驚かれてましたし。
お館様が持つ鬼殺の歴史の中に度々現れていた鬼。
それが、本当に主たる無惨を殺そうとしていた復讐鬼とは」


宇髄「何だ、悔しいのか?」

胡蝶「………ええ。とても」











胡蝶のその声音は、復讐に満ちた憎悪の音だった。
それもそうだろうよ、鬼殺隊に力を貸す鬼。
己が鬼である事を嘆き、自身の死を望み、
それでも死ねない鬼の存在。

そんな都合がいいような、馬鹿な話はねぇ。
鬼に襲われた人間なんざ数しれない。
鬼殺隊が始まって千年。長い歴史の中で死んだ人間は
数え切れねぇほどいるんだ。


手のひらコロコロと返せれる程、簡単な話じゃねぇ。



俺は鬼に対して個人的な感情はねぇが、
仲間の内なる音を聞く度に思う。











“私は鬼となった人間を救いたいだけだよ”──











お前の音が、切なく聞こえるのよ。








宇髄side〜end〜

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作者名:冷泉 雪桜 | 作成日時:2023年4月18日 21時

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