二十六度 ページ28
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『!!』
思わず体が強張り、ジャラリと繋がれている鎖が、
体の動きに合わせて鳴った。
目の前に出されたのは、小さな小袋だった。
そこから漏れ出ていたのは、紫の小さな花弁。
鬼にとって、毒である藤の花だ。
匂いが鼻につく。酷い吐き気が込み上げる。
胡蝶「!伊黒さん、それはっ」
伊黒「効果が薄れた藤の花の匂い袋。
枯れた藤の花の花弁を集めたものだ。
鬼が死ぬ手段は頸を斬られるか、陽の下で焼かれるか。
少量であれば問題ないだろう。
以前胡蝶が試していたからな、保証する」
『………それをどうしろト?』
伊黒「食え」
『…………』
胡蝶「…………伊黒さん………流石にそれは度が過ぎます」
伊黒「何だと?竈門禰豆子の時だって、不死川が同じように
証明させただろう。
なら変えて、不死川が血を流すか?
それであれば目の色変えて、襲ってくるのが目に見えている。
今回はお館様の”殺すな“というご意向を考え、
この方法を取ったが………問題あるのか?
不死川が怪我をすれば、お前の仕事が増えるだけだがな、胡蝶」
胡蝶「……、」
伊黒「何、少し食えば良いだけだ。
それでも苦痛ではあるだろうがな。
ほら、どうした?やはり食えんか」
伊黒はそう言って、私を見下ろしている。
誠意を見せろ──そういう事か。
再び目の前に散らばった枯れた藤の花を見た。
確かに、鬼にとって藤の花は嫌う傾向がある。
喰うこと事態は出来る。
鬼の死は、首を斬られるか、太陽に焼かれる事だからな。
藤の花を食った所で死ぬことはない。
藤の花を使用した毒として改造されていなければ。
先程の反応を見るに”胡蝶“という娘は
そういう事に詳しいのだろう。
『…………』
ジャラリ
伊黒「!」
「「「………!!」」」
私は、後ろで手枷に嵌められた手を握り、
前屈みになると、花を咥えた。
口の中に入れ、花を喰らう。
すると、喉の奥が熱くなり、また吐き気が込み上げる。
体が花を拒絶している。今にも吐き出してしまいそうだ。
だが………対価としてはこれで割に合うだろう。
花を飲み込めば、体に異常が現れているのが
身にしみて分かった。
呼吸がうまく出来ない。苦しい。
口の端から、僅かに血が流れ出た。
『………ッ、れ、で………満足、カ………?』
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作者名:冷泉 雪桜 | 作成日時:2023年4月18日 21時