二十四度 ページ26
その言葉に思わず私は目を見開いた。
それは、切り札だった。
私から渡せるものは無惨の情報。
『(この男………私から切り出す前にそこに気づくとは、)』
何百年ものの間、私は生まれ変わっては死んでを繰り返した。
長い、長すぎるその時間の間、
悠長に生きて死ぬを繰り返してきたわけではない。
私の情報で無惨を殺す手がかりになるのなら死んでも構わない。
ただ“今の私”が死ねば、この体の持ち主も体が崩れ灰と化す。
そうすれば、彼女にしか持っていない無惨の情報も得られない。
彼女はここに居る人間の中でも唯一
無惨と接触していた人間だろう。
無惨は己が生きるためなら手段を選ばない。
姑息な手で逃げてばかりの卑怯な鬼。
その無惨と接触した時に、この体の主も戦ったはず。
この鍛え上げられた呼吸の持ち主が、
無惨と接触した時、何かしら気づいたことがあったはずなのだ。
それを思い出せばもっと、無惨に近づける。
思い出すまで、この体を死なせるわけにはいかない。
私は死んでも構わないが、この娘だけは…………
娘が得た無惨に近づく為の情報を得なければ、
彼女の死に意味を与えることなど出来ない。
それを、私の話をわずかに聞いただけだというのに、
天元という男は、可能性を見出した。
なんて洞察力が優れた人間だ。
伊黒「だからこの鬼を生かせと?
意外だな、貴様は同じく鬼を殺すことを選ぶと思っていたが?」
天元「勘違いすんな。勿論、人を襲わねぇ保証はねぇが、
可能性を考えていたのよ。
考えても見ろ、最近の隊士達は腕が立たねぇわ、
直ぐ死ぬわでろくに役に立ってねぇ。
なら情報あるのみ。
その情報を下に隊士共を鍛え直すことも考えられる。
お前らは考えが後ろ向き過ぎんだよ、地味にな」
実弥「人を襲わない保証がない時点で、
生かす理由になるかァ!」
??「………いえ、宇髄さんの意見も一理あるかと」
伊黒「胡蝶………何が言いたい?」
胡蝶「勿論、危険性はありますが、
炭治郎君の無惨接触時の情報だけでは
来るべき無惨との決戦時、対策のしようがないと思うんです。
今のうちに少しずつ備えるのもいいかとは思いますが?
………ね?冨岡さん?」
冨岡「………俺は隊の方針に従うだけだ」
胡蝶「もう、最初からそう言えばいいのに」
冨岡「…………」
輝哉「………意見が別れたね。
それぞれ意見を出してもらえて良かった。
なら私の考えも聞いてくれるかな」
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作者名:冷泉 雪桜 | 作成日時:2023年4月18日 21時