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十九度 ページ21

鬼は悪だ。
お館様の意向もあって手出しはしねぇが、
竈門炭治郎も、あの糞鬼の妹も信じちゃいねぇ。

こいつも同じだ。信じられるか。
鬼が居るからいけねぇんだ。
鬼が存在している限り、鬼殺隊の奴らも………あいつも。
そして死した仲間も、誰一人として「普通の日々」が送れねェ。

誰一人、陽の光の中で生きていけねぇ。


醜い鬼は全て殺す──
手からどれほどの命が零れ落ちたか。
許せるはずがねェんだよ。あっちゃいけねェんだ。











『………そうカ。それなら感謝しなければナ』

実弥「………あァ?」










その時、鬼は目を伏せながらそんなことを口にした。
………おいおい。頭かち割れてんのかァ。
場違いな言葉が鬼の口から聞いた。

俺は今、テメェを殺すと言ったんだぞ。










『私は死ねなイ。今までも、死に場所を求メ、彷徨イ、
何度もお前達鬼狩りに出会ってハ、
頸を斬って貰おうと近づいタ。
逃げようとする本能に逆らイ、太陽の下に行っタ。

何度も、何度も………それでも死ねなイ。
無惨を………奴を葬るまでは償いとして生きてきたガ、
根本的には変わらないのダ』










その時、初めて鬼は顔を上げた。
同じ顔、同じ声音で、やつは続ける。










『本当であれば、貴様のような奴に
頸を斬られるのガ、一番いいのだろウ。

もしも斬るとなるならば、長く、苦しませて殺してくレ。
私を許すことなク、長く、長く、苦痛を与えて殺すといイ』










─────────────────────









実弥殿──


私は鬼になったとしても。


人であると誓おう。


異形となっても。人の姿で無くなっても。

人であり続けよう。





だから君は──

そのままで居てくれ。
私が信じている、君のままで。









─────────────────────










Aと会話した日を思い出した。
満月の日で、Aが仮に“鬼となった場合”の話をしたあの日。

彼女が俺に言った言葉。












実弥「………あァ、そうかい。
言われなくても殺してやるよォ………糞鬼ィ」












嗚呼。胸糞悪い気分だ。

この世界にカミサマってのが本当に存在するなら。



俺ァ、カミサマをも恨むぜ………











実弥「(化けれてねぇんだよ、テメェのその面ァ……!)」










俺が知っているAは、そんな顔しねぇんだよ──

そんな、顔なんざ………しねぇんだよ糞がァ。









実弥〜end〜

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作者名:冷泉 雪桜 | 作成日時:2023年4月18日 21時

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