二度 ページ3
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また、鬼だ。
気がついたらまた鬼になっていた。
手元を見ると、人の血がこびり着いていた。
それを見た途端、突然、
言い表すことができないような感情に駆られた。
鬼にとって人の血肉は獣が獲物を食らうこと、
人間が食事をすることと同じのこと。
なのに、なのに──
『ッ………!!ヴェ、ェ、……ゲ、……ガッ!?!?』
不快感、悪寒、倦怠感、不安感、恐怖、嫌悪感、
気持ち悪い感情が渦巻いた。
苦しい、苦しい!
何故私の手はこんなに血で染まっている!?
そうだ私が人を殺したに違いない!!
殺した……?私が?
人を、殺した????
信じられないような、
そんな感情がぐるぐると私の思考を搔き乱す。
おかしい、おかしい!
私は鬼の筈だ。なのに何故だ。
喰らいつきたいのに、腹が減って仕方ないはずなのに、
思考がそれを拒んでいる。
喰らいたくないと叫ぶ!
理性と本能が戦うように、酷い頭痛が襲う。
それでも喰らいたいと思う私は無理やり口に
人だったであろう肉塊を押し込んだ。
グチャグチャと汚らしく咀嚼し、血をジュルジュルと啜った。
気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い!!!!
そして──
ドクン、と…………
もう動かないはずの心の臓が大きく跳ねた。
『………ァ、………ア、ガ』
無惨様
無惨、さ、ま──
鬼舞辻無惨
無惨──無惨、無惨──
『ム、ザン』
鬼舞辻無惨、鬼舞辻無惨!!!
無惨!!!!!!
『キブツジ、ム、ザン──!!!!!』
ドクン!!
鬼の祖の名を口にした。
その瞬間に、本来なら無惨の支配の呪いにより、
細胞から破壊され、私は死ぬはずだった。
だが、死ななかった。
理解する。いつからか、私は無惨の支配から逃れたのだ。
それと同時に、もう一つの感情が芽生える。
憎しみ──
憎しみが私の体を、襲う。
今、咀嚼して食らった人間。
その肉塊を吐き出した。
悪寒と憎悪、嫌悪感と罪悪感により、
これまで食った人間を吐き出す勢いで吐いた。
『グ、ガッ!!アガ、!ゲホッ、ヴゥ!?』
吐き出して、辺りを見渡した。
見えていなかった視界が、開けた気がした。
そこは、人の亡骸が多く転がっていた。
私がやった。鬼である私が、この地獄を作ったのだ。
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作者名:冷泉 雪桜 | 作成日時:2023年4月18日 21時