十五度 ページ17
円環の鬼は諦めるような声色で、
自身の存在を認めた。
円環の鬼はそこで初めて輝哉に近づく。
『私は、寄生の鬼だ。これまで何度も蘇っタ。
死した鬼にしか蘇ることを許されズ、
ひたすら死んで、蘇るを繰り返してきタ。
そんな中、貴様達が記録した通り、
私は知性を持てるようになリ、言葉も取り戻しタ。
それでも己が何者だったのかさえ思い出せなイ』
輝哉「…………」
『死した鬼達の記憶。もう何度も見てきタ。
悲惨な最期だった鬼ばかりダ。
生前は、まだ十にも満たない幼子であった者もいル………』
輝哉「うん。ならば君が、私達に近づいたのは、」
『同じダ。無惨を葬ル。
それが私が侵してしまった罪の償イ。
生き延びてしまった私に出来るこト。
人を襲い、私が喰ってしまった人間。
鬼という呪縛から死したことで開放されるはずだった鬼が
私という存在のせいで再び蘇り、罪をまた重ねた鬼達。
残された人間………どれほど償っても償いきれなイ。
私が侵した罪は重すぎル………』
輝哉「………君は、人を食べているのかな」
『この娘の体になってからはなイ。
人を喰らう前に、この娘は己で頸を斬り落とした。
そのおかげもあってか、
皮肉なことに人を喰らおうとも思わなイ』
輝哉「そうか………少し安心したよ──っ、ゴホッ」
その時、輝哉は咳き込み、血を吐いた。
ピチャリとその血は床へと落ちる。
それを見た円環の鬼は、最初こそ驚いたものの、
スッと目を細め、ただ見ているだけだった。
『手は、貸せなイ。私は鬼ダ。襲う可能性も無ではなイ』
輝哉「ゴホッ………ケホッ………問題ないよ。慣れているからね」
『それで貴様は私をどうすル?殺すように命じるカ』
輝哉「そうだね………本音を言えば、
私は君と協力関係でありたいと、思っているよ。
でも──」
その時。
ガサッ!と物陰より複数の影が、鬼に迫る。
鬼は何者かが襲いかかることに気づいていた。
その視線や気配に、憎悪や殺気が込められていることも。
だが今まさに鬼に襲いかかろうとしている影に対し、
鬼は抵抗しなかった。
そして、ガッと頭上より目に見えぬ速さで
あっという間に地面に頭を押さえつけられ、
身動きが取れない状態となる。
??「お館様っ!ご無事ですかっ」
??「どうやって入ったァ!この糞鬼がァ!!」
鬼は、ただ………輝哉をじっと見つめていた。
not,side〜end〜
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作者名:冷泉 雪桜 | 作成日時:2023年4月18日 21時