十四度 ページ16
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遥か遠い昔。
ある剣士が、とある鬼と遭遇した。
その剣士は洞察力が高く、鬼の特徴を見ていた。
鬼には特徴的な羽根のような黒い模様の痣があったという。
剣士は頸を跳ねた。
鬼はやがて朽ち果て、霧散していく。
しかし、翌日。
同じ特徴的な羽根の模様の鬼を見た。
姿形、そして気配。何れも前夜の鬼とは全く違うもの。
血鬼術も違った鬼が現れた。
その剣士は
「まるで前夜の鬼と同じモノと対峙しているようだった」
と、晩年にそう言い残している。
その日を境に、同じく羽根の黒い模様を持つ鬼が
時代別に現れていた。
5年後。あるいは20年後。そして100年。
時代別で、その鬼はその時代の鬼殺隊の子供達が見てきた。
時代別の産屋敷家当主達は、
始めは無惨に繋がる手がかりだと思っていた。
しかし、歳を重ねるのと同時に、
その羽根の痣を持つ鬼は、知性を持ち始めたかのように見えた。
時には鬼殺隊の隊士に、まるで交渉しようと
拙い言葉で、近づいてきたともある。
輝哉「………それが、君だね？転生のような血鬼術を使う鬼。
私達、鬼殺隊に交渉しようと時代ごとに何度も
近づいていた鬼は」
『………』
静かに告げた輝哉。まるで確信を持つような言葉に、
円環の鬼は一瞬、ほんの一瞬、躊躇うように口を開く。
が、一度閉ざされ、再び口を開いた時は
動揺はどこにもなかった。
『見る限りでハ、貴様は目が見えないようだガ。
何故私が貴様達が持つ記録に載る鬼だと分かっタ？
それでは痣は見えるはずもなイ』
輝哉「………その体の持ち主である彼女の死は、
既に私の耳に届いている。
その声だ。あの子の声で君が話している。
そしてあの子はね。いつもこの時間帯に
私の様子を見に来てくれていたんだ。
私の立場は無惨にとっては最も邪魔な存在だから、
優しいあの子は、影から私を守るために
危ない夜にわざわざここまで来て、
夜明けまで番をしてくれていたんだよ」
『…………』
輝哉「あの子はもう居ない。
彼女の鴉がそう私に教えてくれた。
それは紛れもない事実。死者が蘇る事なんてない。
………後は、勘だね。
声を聞いて、この時間帯に君が現れた。
それが勘から確信となった」
『凄まじい程の先見の明だナ。
成程。無惨からの追手からこれまで回避できたのも納得ダ』
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作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2023年4月18日 21時
