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十三度 ページ15

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ここは産屋敷家の屋敷。
縁側には産屋敷家当主である“産屋敷耀哉が”そこ座っていた。
そよそよと、緩やかな風が輝哉の髪を撫でた。

そして、少し強い風が一風舞う。








輝哉「………うん。今日は明るいね。
目が見えなくなった私でも、月明かりを感じるよ。
今日は満月かな?」









輝哉は穏やかに一つ一つ言葉を紡ぐ。
誰かに語るように話すその声は、静かな庭に響いた。
そして、輝哉はとある一定の方角を見つめる。








輝哉「そろそろかと、思っていたよ」

『…………!?』








目が見えないはずの輝哉。
しかしその見つめる先に居たのは、名もなき鬼。
“円環の鬼”がそこにはいた。

円環の鬼は音もなくこの屋敷の庭へと入った。
だが、輝哉はここに円環の鬼がやって来る事を
最初から分かっていたかのように、
じっと盲目の瞳を円環の鬼へと向けていたのだ。









輝哉「やあ。会うのは初めてだね」

『………私を、知っているのカ』


輝哉「いや。私は君を知らない。
でも………君のことを知っている者たちが居た。
私は、彼らの代行者に過ぎないんだ」


『…………』











円環の鬼は警戒するように身構えた。
行動をまるで見透かすような、輝哉の持つ先見の明の力。
行動を読まれているような錯覚を覚えた円環の鬼が
警戒態勢をとるのは至極当然のことであった。

しかし、輝哉はふるりと首を横に振る。









輝哉「大丈夫。この時間帯は
見回りの子達は別の箇所を巡回している。
君の記憶通りだよ」


『私の何を知っていル』


輝哉「………そうだね。驚かせてしまったかな。
順を追って話そうか………」









輝哉はそう告げ、スルッと羽織を着直す。
そしてゆっくりとその口を動かした。









輝哉「産屋敷家にはね。
これまで子供達が討伐した鬼の情報を纏めた
過去の文献が多く存在している。

記録は情報。情報は大きな力となる時もある。
多くの情報を集め、少しでも無惨へと近付くために
私達の先祖は多くの記録をひたすら残し続けていたんだよ。

そして、とある文献の中に、
鬼の一部に共通するものがあった。
それが君の存在を示していた…………」









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作者名:冷泉 雪桜 | 作成日時:2023年4月18日 21時

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