【刀剣乱舞】その神、縁を知る者

†陸佰肆† “知らない物” ページ25

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燭台「主、落としたよ」

『え？あ、すみません』


燭台「ごめん、少し見ちゃった。
主の小さい頃の写真、だよね」


『えっ！？お、お恥ずかしい所を………』

燭台「どうして？ﾌﾌｯ………可愛いよ」

『うっ』


燭台「………優しそうなお父さんだね。
もう一人が、黒田君かな？」


『！……………』









僕の言葉を聞いた主が、
目を見開いて再び写真に目を移した。

それから、今まで見たことないくらい、
泣きそうな、でも優しく微笑んでいて………









『……………“お父さん”』









彼女の、本当の笑顔を見た気がした。
………お父さんが嫌いだって言っていた。
黒田君の事も嫌いだって言っていた。

嘘だ。嫌いなら、そんな優しい顔なんてしないよ。
いとおしそうに見つめたりしないよ。


そうだ、その体質でなければ………
彼女は普通の女の子だ。
普通の生活をした、普通の幸せを送るはずだった。









燭台「主」

『？はい』


燭台「吐かなくていい嘘は、吐かなくていいんだ。
もっと我が儘になっていいんだよ。

それがきっと、人間には必要なんだ」


『………』

燭台「それにそうしてくれた方が、僕も嬉しい」









すると主は、何かを言いかけるように口を開けた。
でも直ぐに閉ざされて、視線を落とす。

甘え方が分からないんだ。
きっとどうしたらいいのか分からなくて………
躊躇してるの、かな。

それから彼女はしばらくうつむいていたけど、
ようやく顔をあげて、飲み込んでしまった
言葉を吐き出す。







『……………行きたい所が、あります』

燭台「どこだい？」


『父と、黒田の墓です。
父の遺骨は火事で無くなってしまったので、
久々に実家に行きたいです………

………手を合わせる事も、無かった、から』


燭台「………分かった。
僕も行くから一緒に行こうか」









僕が手を伸ばすと、
彼女はおずおずと手を置いてくれた。
甘える事が今まで出来なかったなら、
足りなかった分を僕らが埋めよう。

笑っていてほしい。
知らない君を知りたいし、僕自身も知ってほしい。


こうして考えると、僕も我が儘だなぁと
つくづく思った。
僕ってこんなに我が儘だったんだ。
知らなかったよ。今まで無理して笑っていたからか、
自分の事も、分からなかった。

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