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『…………赤神さん。あそこ、見えますか？』
赤神《ん？なになに？》
『ほら。あそこに桜の木があるでしょう？
遡行軍の瘴気の濃さで、随分枯れてしまったんですけど、
僅かに生きている所があって。
今、丁度咲いてる時期だったから………』
不意に、私は赤神さんに声をかけて、
縁側の正面にある桜の木を指さした。
月明かりによって、半分枯れてしまった桜の大木は
枯れていながらも美しく照らされている。
あの木は生きている。良かった。
あれは、最初この本丸に来たばかりの頃、
歌仙とその桜の木を眺めていた時があった。
その時は葉が多い茂ってた時期だったから、
まだここに来て半年の私は桜を見れなかった。
歌仙と約束していたっけ………
「桜が咲いたらまた一緒に見よう」って。
………叶えられなかった、約束だけど……
赤神《………あー！私がここに来てからずっとある桜の木だね》
『はい。ここの本丸が赤神本丸と呼ばれる前。
ファイブが本丸を収めていた頃から居る、古参の和泉守が
さっき教えてくれたんです。
あの大木の桜は、この本丸の歴史を知る木だと』
赤神《そっかぁ。あいつ意外と風情を楽しむからなぁ〜》
『次の年になったら、もっと咲いてるでしょうか』
赤神《そだね〜。何とかあの桜の木も復活できるように
見守っていくとしようか。
病気を持った木の世話の仕方、今度調べてみるよ》
『いい香りですよね。赤神さんと一緒に見れて良かった』
サワサワと、風が私の頬を撫で、髪を揺らした。
少しばかり桜吹雪が舞って、私達の間を風がすり抜ける。
『来年も、一緒に見ましょうね』
私は赤神さんに笑ってそう言う。
すると赤神さんは拍子抜けたような顔を暫くして、
半端開いていた口が何かを伝えようと僅かに動かせた。
でも、彼は言葉を飲み、口を閉ざす。
そして──
赤神《…………、》
綺麗に、微笑んだ。
私の言葉に、赤神さんは「うん」とも「そうだね」とも。
何も、言ってはくれなかった。
ただ微笑んで、私を愛しそうに見つめているだけだった。
『………ｯ、どうして、かな。あれだけ、泣いたのに』
赤神《！Aちゃん………》
………情けないな。成長した姿を、この人には見せたかったのに。
泣いて、ばかりで。
赤神《………私は生きるよ。だから、泣かないで？》
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冷泉 雪桜(プロフ) - 華凪さん» コメントありがとうございますー！これからも頑張ります！ (2022年11月1日 20時) (
レス) id: 18535e1a43 (このIDを非表示/違反報告)
華凪(プロフ) - 完結おめでとうございます！！毎日愛読させていただき、更新をいまかいまかと待ち構えておりました。長い連載お疲れ様です！次の作品もすごく楽しみにしております！大変かと思われますががんばって下さい！これからも冷泉雪桜様の作品を楽しみにしております！ (2022年10月29日 22時) (レス) @page39 id: a45e30bab6 (このIDを非表示/違反報告)
冷泉 雪桜(プロフ) - 無事に完結致しました！皆様のおかけでございます。これからもよろしくおねがいします。 (2022年10月27日 20時) (レス) id: 18535e1a43 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2022年9月19日 12時
