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ぎり、とゾムが歯を鳴らす。どこか、男がAに執着する気持ちが分かった気がした。
チッと舌打ちをして、またナイフを構える。特段、この男にだけは負けたくないと思った。
「あれ、この数字を見ても戦う気があるんだね」
ニタニタと笑う男は何も構えることなく、喋り続けている。それを好機と考えたゾムは即座に手榴弾を投げ、相手の視界を奪うと一気に距離を詰めた。
ナイフを思いっきり振りかぶるも、あの生暖かい感触は無い。その代わりに固い金属がぶつかる音がした。
どーん!
ゾムが男と睨み合っていると遠くで爆発音が聞こえた。途端入る通信。どうやらチーノが空挺を操り、爆弾を落としているようだった。
「やべ。こんなことしてる暇じゃないや。しょうがない。この子は諦めることにするよ」
じゃあね、と軽く手を振ると男はすぐに消えた。
zm「ま、待てや!」
口からはそう出るも、追いかける気は無い。まずはAの容態を確認することの方が重要だった。
木の影に置かれたAに慌てて駆け寄る。いつもとは違いお面を付けていないAは、苦しそうに顔を歪めていた。
zm「Aが何者かによって負傷した。今から連れて帰るわ」
守りきれなかったこと。原因を取り除けなかったこと。自分に力がないこと。全てがゾムにのしかかる。やはり、抗議して同じ配置にしてもらうべきだったと思っても、もう遅い。
かき消すようにかぶりを振って、ゾムはAを背負った。
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あまね(プロフ) - あああああああああなんか今まで見たことない感じで好きですぅぅぅぅぅぅぅ (8月22日 18時) (レス) @page40 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハク | 作成日時:2022年9月6日 19時