【wrwrd】目の前に推しがいるんだけど！？2【d!】【軍パロ】 (ページ35)

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男は持っていたナイフを仕舞い、両頬に手を添えてうっとりと俺を眺めてくる。その視線が気持ち悪くて体を捩りたかったが、生憎脳と手足の間がぷつんと切れたかのようにぴくりとも動かない。

「ささ、僕と一緒に来てね。大丈夫。痛いことはしないよぉ？」

でろりと溶けてしまいそうな程に甘い声が耳を貫き、脳を駆け回る。ズルリと脊髄を抜き出して舐め始めてしまいそうな、ありとあらゆる所まで知っているような瞳が俺を捉えて離さない。

男は俺をそのまま仰向けにごろりと転がすと、膝の下と腰の下に手を入れるとそのまま上へ持ち上げた。久しぶりの感覚に少し驚く。このまま、俺は捕虜として連れ去られるのだろう。痛みには慣れているし、あの国の情報を吐けと言われたってそもそも知らないのだから吐けるほどのモノもない。ああ、けれど、緑のネズミが今お宅の城に入り込んでるってのは教えてやってもいいかもしれない。

「よいしょ。ごめんね。行き先を知られるのは困るんだ」

先程横抱きにしたくせに、今度は片手で抱き合うかのように俺を持つと、男は湿った布を口元に当ててくる。言いなりになるのは癪だと思って鼻呼吸を続けていれば、布を当てていた手の親指と人差し指で鼻をつままれた。息を止めるも苦しくなって、呆気なく口で呼吸した。

クラクラ、トロトロと思考が溶けていって、俺の瞼はすぐに落ちた。

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