お隣さん (ページ8)

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無言のやりとりページ8

とある日の昼。雨。

バルコニーに出て立ち尽くしたまま空を見上げる。

曇り空から落ちてくる雫は、地面に叩きつけられ、先に落ちた雫達と交わる。

ふと視線を落とすと、隣の家の窓からはこたろーさんが見ていた。

彼は一瞬いなくなったと思うと、「何してるんですか？」と書いた大きめの紙をこちらに見せた。

「む、面白い」

ならばこちらも、と部屋に入って返事を書き、
再びバルコニーへ出て見せる。

「インスピレーション」

それを読んだ彼はコクコクと頷き、いなくなってしまった。

気を遣ってくれたのだろうか。

その後別の窓からしるこさんがこちらを見つけ、笑顔で手を振ってきたので、振り返した。

２人の反応の違いが面白い。

……

翌日。晴れ。

そろそろまずいと思い、荒れ放題の庭の手入れを始める。

すると隣の家の玄関から勢いよくバロンが飛び出してくるのが見えた。

その後を追うようにはこたろーさんも出てきた。

彼はこちらに気付くと軽く会釈をした。

私も会釈をし返した。

……

そのまた翌日。晴れ。

窓から外を覗くと、隣の庭で花に水をやるはこたろーさんを発見。

コンコンと窓を鳴らすと、こちらに気付き、またペコリと会釈。

私は手を振ってみた。

すると手を振り返してくれた。

少し戸惑うように振る彼が面白くて。

無言のやりとりは、しばらくの間ほぼ毎日続いた。