8話 ページ8
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「せ、先輩も、この時間の電車だったんですね」
「あ? あー…まぁな」
なぜか歯切れ悪い返事をする先輩に少し違和感を感じたが、その時急に電車が激しく揺れ、つり革も何も掴んでいなかった私は前に立っていた二郎先輩にぶつかってしまった。
「っと、大丈夫か?」
「ごごご、ごめんなさいっ! 今退きま、すっ、あ、あれ? 上手く動け、ない」
「俺は別にいいから、無理に動こうとすんな。またさっきみたいになるぞ」
「うっ…」
背中に二郎先輩の腕が回り、グッと寄せられてしまいより一層距離が縮まったせいで私の心臓は今にも爆発してしまうんじゃないかと不安になるくらいバクバクと高鳴っていて、こんなに密着していたら二郎先輩に気づかれてしまうかもしれない…。
せめて、赤くなっているであろう顔は見られぬよう俯いた。
視界に移る私の足と二郎先輩の大きい足。身長があるから大きいとは思ってたけど、自分の足と並ぶと一目瞭然だ。
そんなところも好きだなぁと、落ち着かせなきゃいけないのにまた心臓の鼓動を早くしてしまってと、さっきから私は忙しない。
まだ先輩にはこの気持ちを知られたくないから隠さなきゃいけないのに、これだと「知ってください!」ってアピールしているようなものじゃないか。頭の指令を体が悲しいことに全部無視してしまう不思議な現象に頭を抱える。
もっと自分に勇気があったら、この骨張った男らしい手を握って、指を絡められたのに。
意気地無しの自分が嫌いだ。
恋には貪欲になっていいと何かの小説で読んだことがある。でも、それは絶対的な自信がないとできない行動で、怖がりで、ビビリな私にはとても不可能だ。変わらなきゃと何度心の中で誓ったことか。もう片手では数え切れないくらいになってしまったかもしれない。
好きです。
簡単な言葉なのに、私は今日も言えない。
「気分わりーの?大丈夫?」
「え、あ…大丈夫、です」
「お前、顔真っ青だぞ。手もつめてーし」
手を取られ、二郎先輩の暖かい体温がじんわりと全身に伝わってくる。
あれ、私今好きな人に手を握られている。なんでこんなに平然としていられるの? 二郎先輩と、ほぼゼロ距離で話していて、手も握られていて…。
ボンッと火が出たんじゃないかってくらい一気に私の体は先輩が小さく「うおっ!?」と、驚かれるくらいに熱くなった。
この人はとっても心臓に悪い…!
「どうした?」と焦った顔で小首を傾げた二郎先輩は、私にだけ小悪魔に見えた。
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幽々華(プロフ) - アオハルやー!!!かわええ!!すき! (2021年1月16日 19時) (レス) id: 1e7a7481f9 (このIDを非表示/違反報告)
シオ(プロフ) - 実は前から見てて面白いなと思って何回も読み返してます!!コメントする勇気が無くて今更何ですけど…!!頑張ってください応援してます!!ホントに今更すみません!!コメント失礼しました!! (2020年3月12日 13時) (レス) id: ecf617ad4f (このIDを非表示/違反報告)
マロカン - コメント失礼します! すみません尊いです(( 尊すぎて禿げそうです← これからも更新頑張ってください!続き、楽しみにしてます! コメント失礼しました! (2019年1月3日 23時) (レス) id: 2a1532ad88 (このIDを非表示/違反報告)
XDDDD - わー!!!だめだ。これは高評価を押さざるを得ないよ!!二郎がかわいすぎる、、、!!おうえんしてるよ!!笑 (2019年1月1日 23時) (レス) id: 8d999ddc14 (このIDを非表示/違反報告)
観音坂とよ(プロフ) - おもしろいです!がんばってください! (2018年12月29日 23時) (レス) id: cf15bbc5d2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:id | 作者ホームページ:
作成日時:2018年11月19日 16時