ななじゅういち 。 ページ26
Side,A
隣で小さいお弁当箱を丁寧に閉まっている彼女を見ていると、なんだか安心する。
一試合目が終わり、次の試合までの時間。
次が伊達工だと分かってから酷く緊張していたけど、彼女と一緒にいるにつれ少しずつそれが和らいだように感じる。
といっても結局トラウマはトラウマで、どれだけ緩和されるといってもそれがゼロになる訳じゃない。
身体冷やすなよ、なんて言われてはいたが徐々に手の指先から熱が無くなっていくように思う。
これ以上熱が逃げないように、ぎゅっと拳を作ると お弁当箱をしまい終わった彼女が俺の方をちらりと見て、ごそごそと自分のカバンを漁る。
なんだろう、と思って彼女を見ていると 鞄から出てきたのはもこもことした手袋と、ホッカイロ。
「 やっぱ手、冷えますか?これ使ってください 」
「 え、でもAちゃんのじゃ… 」
「 確かに手袋は旭先輩の手のサイズじゃ入りませんね 」
迂闊でした、なんて 言ってから はいと俺にホッカイロを渡してくれる。袋から出されたそれをシャカシャカと振って握りしめるとじんわりとした温かさが手に拡がった。
貰っていいの?と問うと 当たり前じゃないですか!と。
「 選手…特にセッターとかだと指先がちゃんと動くかどうかって大事じゃないですか。でも中学の時、めちゃくちゃセッターが冷え症でトスがすごい乱れるって事が1回あって 」
「 そういや中学の時もマネージャーやってんだっけ 」
「 はい!その時に出来るだけマネージャーとしてもアシスト出来ることはしておこう、と思ってからこういうの持ち歩くようになったんです 」
力になれて良かったー、なんて笑う彼女に 心の中で力になってるなんて今更だ、と思う。
出会った時から、彼女は俺の心をずっと軽くしてくれていた。大好きなこの居場所に戻れたきっかけの一つだって彼女だ。
そして今も、きっと一人で居れば緊張で押しつぶされそうになっていた俺のそばで ふわりと笑ってくれている。
俺は、横に置かれていた彼女の手を握る。その手は、カイロより温かい訳では無いけれど、それでもほんのりと温かい。
驚いたように俺を見る彼女に、カイロ開けたてだから温かくなるまで…なんて変な言い訳をつけて。
頑張るから、も 絶対勝つから、も昨日告げた。
あとはその言葉通り頑張って、彼女の“憧れの先輩”で居続けたい。
控えめに握り返してくれた彼女に、勝手に心に誓った。
終わり ログインすれば
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ユキヒメ - 旭さんが二推しで、探してたら見つけて一気読みしました!更新待ってます! (2021年5月7日 20時) (レス) id: 19f1affe62 (このIDを非表示/違反報告)
あや(プロフ) - 見つけた瞬間から一気読みしちゃいました!続きが気になってキュンキュンしまくってしまいました!更新大変でしょうが頑張って下さい! (2020年12月15日 1時) (レス) id: 960a4eb808 (このIDを非表示/違反報告)
みぃ(プロフ) - こんにちは!初めまして^^旭推しです☆この小説で前より好きになりました(*´ω`*)読み進める手が止まらず…一気読みしてました(笑)もう一周しようと思ってます(笑)それぐらい、大好きな作品です(*Ü*) (2020年7月15日 15時) (レス) id: aab7ed587a (このIDを非表示/違反報告)
カナタ - 主人公ちゃん可愛い!!旭さん推しなんですけど、ほんと可愛いくてカッコよくて…!2人がすれ違うとことかすごくムズムズしたけど、頑張る主人公ちゃんと旭さんにきゅんきゅんしました/////周りの会話もめっちゃ面白いです!更新頑張ってください! (2020年5月14日 17時) (レス) id: fc99185244 (このIDを非表示/違反報告)
佐野陽(プロフ) - ヒマリさん» お返事遅くなってすみません。コメントありがとうございます!自分の好きなキャラの魅力を少しでも伝えられてるようでとても嬉しいです!これからもキュンキュンを届けられるよう頑張ります! (2020年4月18日 6時) (レス) id: 5b9b2f32d1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:佐野陽 | 作成日時:2020年4月9日 5時