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随分と長い夢を見ていたようだった。
萩原に後悔させてやる、なんて考えていたこともずっとずっと前のことみたいだった。
今まで私が生きていた世界は何だったんだろう。
私は今まで、何度降谷を苦しませたのだろう。
『ずっと、1人で頑張ってたの?』
『私たちが死なないために、ずっと?』
「当たり前だろ、誰が仲間の死ぬところなんて見たいと思うんだ」
私と降谷とでは根本的に違うのだと悟った。
自分が死んだ時の周りの反応を見たかった、ただの我儘な私。
そんな私ですら助けようとして全てが失敗に終わってしまった降谷。
「結局、死んだ人間を生かす未来なんて作れなかったけどな」
そう言って随分と降谷は悲しそうに笑った。
そうだ、随分と長く話し過ぎていたせいで忘れるところだった。
私は今から死ぬのだ。
以前に逮捕した犯人の恋人に、逆恨みで殺されるのだ。
「よかったよ、最後に浅川と話せて」
「本音を話せるのは、秘密を話せるのは、俺には、浅川しかいないから」
私たちの会話が長引いたせいで、私を家の周りで待ち伏せていた犯人が諦めて帰ったりしていないだろうか。
そんなことを考えるほど、私はまだ死にたくないと思った。
『そうだね、私も降谷と話せてよかった』
降谷は私の背中を押して、駐車場へと向かわせる。
同じ場所に車を停めたというのに、私とは一緒に来てくれないようだ。
「仕方ないんだよな、こんな結末でも」
「受け入れる覚悟はずっと前からできてたよ」
私のことを見送った降谷はどうするんだろう。
私が刺されたという報告を受けるまでどうするのだろう。
思わず後ろを振り向きそうになって、それをやめた。
だから代わりに声を張り上げて叫んだ。
『大切だったよ』
『6人の時間が私にとっての最良だった』
『私を助けようとしてくれてありがとう』
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水素(プロフ) - はわわ、好きすぎます (5月4日 0時) (レス) @page37 id: d3132b0e09 (このIDを非表示/違反報告)
栖井蓮華(プロフ) - お疲れ様です!完結おめでとうございます!夢主と降谷さんと同じく、実は松田くんと萩、景、班長も同じタイムリーパー仲間なのかなと考えられました!そしてお気に入りで大好きな作品です。改めまして、ありがとうございました! (2022年12月29日 7時) (レス) @page37 id: a776764b82 (このIDを非表示/違反報告)
まみこ(プロフ) - 完結おめでとうございます!本当に素敵なお話をどうもありがとうございました!涙が止まりません。これからも読み返し続けます。 (2022年12月26日 21時) (レス) @page37 id: 9d3f4398ec (このIDを非表示/違反報告)
さーもん(プロフ) - 素晴らしい作品ありがとうございます!ストーリーがめちゃくちゃ好きで続きの更新待っています!! (2022年12月15日 1時) (レス) @page32 id: fd46f469b4 (このIDを非表示/違反報告)
まみこ(プロフ) - 《ネタバレ注意》やっぱ、降谷さんたち同期みんな何度も人生体験してるよね!? (2022年11月19日 13時) (レス) @page32 id: 9d3f4398ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:文鳥番長 | 作成日時:2022年5月3日 20時