76.【番外編】Valentine. ページ26
事が済むまで帰ってくるなよ、
という言葉と共に、マスタングは壊れたドアを無理やり閉める。
全く、私は何をしているんだ、
そうぽつりと零れた言葉がAの耳に届く事はなかった。
一方。
締め出された2人は沈黙したまま、微動だにしない状態でいた。
どうしよう、この空気……
何言ったらいいの？とりあえず謝っとく？いやそもそも謝るって何を＿＿＿
と、心の中で静かに混乱するAの目に、
ふとエドの手が映る。
その手は、震えていた。
『…エド、もしかして＿＿＿＿寒い？』
「……当たり前だろ、暖冬とはいえ今は冬だぞ」
『ですよねー……と、とにかく、病人がこんな所居ちゃまずいし、早く病院に戻「これ」
エドの指が、
かすかに震えながら首元に向かえば、
下を向きがちだったAの視線もそれにつられて、彼の首へと向けられる。
そこに巻いてあるのは、Aが彼に宛てて選んだ、赤いマフラーだった。
『それ…私が選んだやつ』
「知ってる」
『つ、着けてくれたんだ』
「…おう」
とりあえず沈黙が破られてほっとするAに、エドは続けた。
「さっきは、悪かった」
『え？』
「…あんたが折角くれたのに、
受け取らなかった事、悪かったと思ってる」
そう言うエドの頬は、単に寒いのと、その他の色々な感情が相まって赤くなっている。
『わ、私こそ余計な事してごめん』
「……いや、う、嬉しかった。
…ありがとな」
…は？
『＿＿＿＿君、誰？』
「なっ…人が素直に礼言ってんのに何だよその反応!!」
いやだって、あまりに意外なこと言うから、
そう言って笑うAに、
さらに顔を赤くしたエドが突っかかる。
そんな微笑ましい仲直りの様子を、
ドアの隙間から恨めしげに見つめる視線に、
2人は最後まで気づかなかった。
《おまけ》
アルが病室を出て行った後、
エドは色々と考えた後にAの置いていった小包を開けた。
中に入っていたのは、
彼のコートよりも少し落ち着いた色味の赤いマフラーと、小さく折りたたまれた紙切れだった。
なんだ？
確かアルのには入ってなかった気が……
なんて考えながら、それを開けば、
中には女らしい小綺麗な字で一言。
“これからよろしくね”
それを読み終わるやいなや、
エドは掛けてあったコートと貰ったばかりのマフラーを掴んで、部屋を飛び出していた。
＿＿＿それはこっちのセリフだ。
と胸の内で返しながら。
《番外編 終》
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名無し20471号 - 続きが読みたいです；； (1月31日 12時) (
レス) id: 736ab31a01 (このIDを非表示/違反報告)
Mira(プロフ) - 課題しないとなのにずっと読んでしまった……。更新いつまでも待ってます！！ (2023年1月26日 23時) (レス) @page42 id: 74a2903c73 (このIDを非表示/違反報告)
戦犯のラーク(プロフ) - 初めてコメントを残させていただきます。とっても最高に面白い作品で続きが楽しみになりました。もし更新があったらすぐ飛んできます。最高の作品をありがとう。 (2022年8月19日 1時) (レス) @page42 id: 327ba37996 (このIDを非表示/違反報告)
にき(プロフ) - 面白すぎてハゲそう。何回も読み返してる笑 (2022年6月25日 21時) (レス) @page42 id: 219a3eddad (このIDを非表示/違反報告)
あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ" - どうして…久々に良作品に出逢えたと思ったら…どうして更新が停止されているんだあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ" (2022年5月29日 14時) (レス) @page42 id: 1b12660de2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぶらぴ | 作成日時：2018年7月30日 15時
