【実.況/者】はちみつ大好き少女の恋【フ/ジ】

甘さ45ｇ ページ45

ばくばくとうるさい心臓を見越したようにインターホンが鳴る。

フジさんだ。フジさんが、来た。

急いで玄関の戸を開けると膝に手をついて息切れを起こしているフジさんがいた。
黒でまとめられた服は似合っていてかっこいい。

「Aちゃん、」

久しぶりにその声で私の名前を聞いた。

久しぶりにその声を聞いた。

なんてことないはずなのに嬉しくて堪らない。
でも、まだダメ。泣いちゃダメ。

「どうぞ、上がってください」
「…いいの？」
「もちろん」
「おじゃま、します」

リビングに通して、お茶を出す。
これしか家にないから仕方ない。
フジさんはどこか落ち着かない様子で、家の中をキョロキョロと見ていた。

フジさんはソファに、私は少し離れた床に座る。
横に座るのは、戸惑った。

「Aちゃん、ごめんね、ごめん」
「…うん、」
「本当に、ごめん」
「うん、それは、何に対して謝ってるの？」
「それは、」
「フジさんの今の彼女は、誰？」
「Aちゃんだべ！」
「…っじゃあ！どうして玲香さんと会ったときあんなに悲しそうな顔をしたの！」

おちつけ、おちつけ、感情的になっちゃダメ。
わかっていても一度溢れ出した思いは止まらない。

俯くと涙が落ちた。

「フジさんが好きなのは、誰なの、」
「Aちゃん、だよ」
「うそだ」
「嘘じゃない。本当。本当にAちゃんが好き。Aちゃんがキヨの名前を出すのも嫌なぐらい好き」
「信じれない」
「…ごめん」
「謝らないでよ、私は謝ってほしいんじゃないの」

ねえ、本当に好きなら今すぐ抱き締めて好きって安心させてよ。
こんなわがままな私のわがままを聞いてよ

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