Homare Arisugawa.R ページ25
『渦神様』
▼(江戸時代パロ)
町は雨に降られていた。勢いの強くなる雨に身を委ねる訳にもいかず、寺子屋からの帰り道を少し早足で歩いていく。
その時、ふと雨が止んだように体に冷たいものに濡れることは無かった。
「雨に降られているようだから、ワタシの傘に入れてあげよう」
「有難う御座います、助かりました有栖川さん」
私に傘を差し出してくれた有栖川さんに断りを入れて、傘に入らせてもらう。
「ワタシが通りかからなければ、キミはずぶ濡れだったのだよ?女性なのだから、少しは気を遣い給え」
「あはは…すいません」
笑い流すように謝りながら雨に降られている町を見る。
「どうかしたのかい?」
「いえ、特には。巷では渦神様も流行ッているようなので気を付けなければと思っていたところです」
「渦神様?」
有栖川さんは御存知ではないのか渦神様の名前を再度呟いた。
私は母から聞いた渦神様の説明概要の一部を読み上げるかのように口に出す。
「渦神様は雨の日に現れる神様です。晴れた日は人として人々の生活に紛れてゐて、雨の日も人の貌をしてゐるものの、雨に濡れると元の姿に戻るのだそうです。
渦神様は娘を探していて、気に入られた娘は徐々に魅入られて仕舞うそうですよ」
私の言葉を聞いて、有栖川さんは至って興味のなさそうな顔をしてあずまやのような家を見つめる。
「江戸にも変な噂が出たものだね」
「そうですね、只の噂でしょうけど…」
小さくそう言って目を伏せる。その時、微かな違和感を感じた。
気付けば、私の頭には有栖川さんの手が乗せられていた。
「キミに何があッても、ワタシが護ッてあげよう。だから安心して佳いのだよ」
「有難う御座います。有栖川さんに護ッて頂けるなら安心ですね」
「ふふ、そうだろう?ほらキミの家に着いてしまったよ。濡れない内に中に入り給え」
片手には傘。片手はヒラリと優雅に手を振る有栖川さんに対してペコりと一礼をし、家の中に入った。
「有栖川さん、肩を濡らしていたようだけど、大丈夫なのかな…。病が起きなければ良いのですけれど」
__________
「やッと見つけたのだよ。うッかり肩を濡らして仕舞ったけど、あの子の事だからきッと気付いてないだろうね」
彼は一人、家と家の細い路地のような場所に入り、傘を畳む。
「……もう逃がしてあげないよ」
家に入って行く彼女を見てそう呟く彼の姿は人の貌では無く、所謂『渦神様』の姿だった。
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はゆー(プロフ) - あゆみさん» コメントありがとうございます!そう言って頂けて光栄です!(*´ `*)これからも、ろい様と力を合わせて更新をがんばっていきたく思っておりますので心待ちにして頂けますと幸いです。あゆみ様をキュン死にさせてみせますのでよろしくお願いします、、!笑 (2019年4月28日 19時) (レス) id: 6a466921ec (このIDを非表示/違反報告)
あゆみ(プロフ) - 毎回めちゃめちゃいいお話ありがとうございます…!!1話読み終わる度に投票してもうしてあるので失敗するという流れを繰り返してます…次の更新も待ってます!! (2019年4月28日 1時) (レス) id: bf0195af74 (このIDを非表示/違反報告)
ろい(プロフ) - 灯無さん» く、口から血が……!?ですが、キュンキュンは抑えません!(笑)これからもドキドキ、キュンキュン全力で恋のサンプルをお届けします! (2019年4月1日 21時) (レス) id: 221a5d6f5e (このIDを非表示/違反報告)
灯無 - ろいさん» いえいえ!良かったです(^ ^) これ以上キュンキュンすると口から血が出そうです。楽しみに待ってます! (2019年3月31日 22時) (レス) id: 126e456bd1 (このIDを非表示/違反報告)
ろい(プロフ) - 灯無さん» ご指摘ありがとうございます!めちゃくちゃ無意識でした!これからははゆーちゃん様と合わせます!更新楽しみにしておいてください、キュンキュンさせてみせます(真顔) (2019年3月31日 16時) (レス) id: 221a5d6f5e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はゆろい x他1人 | 作成日時:2019年3月31日 2時