Azuma Yukishiro.R ページ11
『夜に溶ける銀』
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「夜桜も良いなぁ…」
ギターと携帯に紙とペンを持って夜桜を見る。
せっかくの桜の季節だから、ひとり夜桜を見て歌詞を書くのも悪くない。
「隣、お邪魔していいかな?」
ふと顔を見上げると、目の前には真っ暗な夜に映える銀色の長髪。雪みたいに白い肌。
「宜しければ…どうぞ」
ギターの形を撫でてケースに入れる。そしてまた夜桜を見上げる。
「仕事帰りか何かかな?」
「まぁ、そんな感じです。お兄さんは……」
「お兄さん、かぁ…。ふふっ、そんなこと久しぶりに言われたよ」
「えっ、お兄さんじゃないんですか?」
私より2歳上ぐらいだと思ってたんだけど…。
「君の名前は?」
「AAです」
「可愛い名前だね、君にぴったり」
お兄さん、強い。何がとは言わないけど。
「…お兄さんの名前は?」
「ふふっ、雪白東だよ。ボクは酔い覚ましに夜桜を見に来たんだ」
「東さん、酔ってるんですか?」
「ふふっ、どう思う?」
怪しげな笑みを浮かべる東さん。少しドキリとしたのは絶対に気の所為。
「……」
「ごめんね、Aの反応が可愛くて」
「そういう所じゃないですか、東さん」
初対面のはずなのになんとなくだけど、東さんの性格が分かってきた気がする。
「Aはギターを持ってきてるみたいだけど作詞作曲でもしてるの?」
「まぁ、一応。仕事なので」
「すごいね、どんな曲を書いてるの?」
「色々ですよ」
そこまで言って、また紙に浮かんだフレーズを綴る。
夜桜を見た東さんは一言。
「綺麗だね」
「綺麗ですね」
東さんの声でまた夜桜を見上げる。暗に溶ける夜に光で照らされている桜は昼と違った綺麗な
「綺麗だよ」
「きれ……、へっ?」
聞こえるはずのない言葉が聞こえた。聞こえるにしても日本語がおかしい。
「あ、東さん?」
「どうかしたの?」
「今なんて…」
「聞こえなかったの?」
「……まぁ、」
これは聞き間違い。そうやって私なりに理解した。そうだよ、こんなこと言うわけない。
「じゃあ今度は聞こえるように耳元で言ってあげる」
「ひっ、」
その声は既に耳元で聞こえていた。そして吐息混じりの声で東さんは言う。
「綺麗だよ」
「ば、ばかじゃないんですか!?」
「ふふっ」
そうやって薄らと上品に笑う東さんの言葉は本気なのか嘘なのか、よく分からない。
この日から私は、東さんに翻弄されるんだ。
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はゆー(プロフ) - あゆみさん» コメントありがとうございます!そう言って頂けて光栄です!(*´ `*)これからも、ろい様と力を合わせて更新をがんばっていきたく思っておりますので心待ちにして頂けますと幸いです。あゆみ様をキュン死にさせてみせますのでよろしくお願いします、、!笑 (2019年4月28日 19時) (レス) id: 6a466921ec (このIDを非表示/違反報告)
あゆみ(プロフ) - 毎回めちゃめちゃいいお話ありがとうございます…!!1話読み終わる度に投票してもうしてあるので失敗するという流れを繰り返してます…次の更新も待ってます!! (2019年4月28日 1時) (レス) id: bf0195af74 (このIDを非表示/違反報告)
ろい(プロフ) - 灯無さん» く、口から血が……!?ですが、キュンキュンは抑えません!(笑)これからもドキドキ、キュンキュン全力で恋のサンプルをお届けします! (2019年4月1日 21時) (レス) id: 221a5d6f5e (このIDを非表示/違反報告)
灯無 - ろいさん» いえいえ!良かったです(^ ^) これ以上キュンキュンすると口から血が出そうです。楽しみに待ってます! (2019年3月31日 22時) (レス) id: 126e456bd1 (このIDを非表示/違反報告)
ろい(プロフ) - 灯無さん» ご指摘ありがとうございます!めちゃくちゃ無意識でした!これからははゆーちゃん様と合わせます!更新楽しみにしておいてください、キュンキュンさせてみせます(真顔) (2019年3月31日 16時) (レス) id: 221a5d6f5e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はゆろい x他1人 | 作成日時:2019年3月31日 2時